春色の軌跡

□03 世界が判明した
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家族があの魔物?の傍に居るのなら、心配になるのは分かる。私も気になるし。だけど私達が行ったところで何になるのか。死亡フラグを立てるのは嫌だ。

シンメは巨大な狐の方向に向かっていたけど、でも唐突に、狐の気配が移動した。ワープしたかのように全く別の場所に。何故気配(エネルギー)で判断するのかと言うと、私は落っこちないように必死にシダレさんにしがみついているからだ。前なんて見れない。

だけど狐は移動したにも関わらず、シンメは走る方向を変えなかった。ただ真っ直ぐに駆けていく。そしてそのうちに、濃厚な血の臭いがしてきた。

「忍が……全滅してる……?」
兄の声色が震えていた。そうか職業は軍人じゃなくて忍なのか。私は相変わらず景色が見えないけれど、辺り一面に死体が転がっているのは分かった。まだかろうじて息のある人も居る。私達以外に動き回る気配は無いので、この場に敵が居る可能性はないだろう。ひとまず安心だ。

こんな血生臭い現場、前世以来だ。久しぶりの惨状に鼻が曲がりそうになっていると、シンメがゆっくりと立ち止まった。
「母さん!父さん!」
シダレさんはシンメから飛び降り――、
「あぎゃ!」
その反動で私が落ちたのを、地面と衝突する前にシンメが私の背中の服をくわえて救出した。やだシンメってばかっこいい!

シンメは私をくわえたまま、シダレさんのところに近づいた。そこでは母であるシナミさんと父であるミヤマさんが……既に、息絶えていた。
よく見ると、倒れている人は見知った人ばかりだった。白い髪の一族が、そこらじゅうで血を流し倒れている。
「シダレ……?ヤエ?」
「姉さんっ!」
木にもたれ掛かるようにして、カスミさんは生きていた。私達もすぐに傍に駆け寄った。
「姉さん!しっかりして!」
「シダレ……何で……。ヤエとお留守番しててって……」
「姉さん……」
「木の葉の忍が、泣く……な」
涙を流す兄と、大量に出血している姉を見て、私も涙が……出そうになったんだけど、ひっこんだ。

今、何て……言った?木の葉?忍?狐……九尾の狐……!?
姉も、その隣で倒れている人も、皆々額に何かを巻いている。葉っぱのマークが彫られた板。

ここって、もしかして……。

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