春色の軌跡

□02 我が家への不審
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私は兄に疎まれている。
そう感じるようになったのは、起きている時間が段々と長くなった生後三ヶ月ぐらいだった。日にちの感覚はよく分からないけど、カレンダーが七だったから。私は多分四月生まれだろうし。この世界も一年は十二ヶ月で、一日は二十四時間っぽい。

「姉さん、手裏剣術を見てもらいたいんだけど」
「今は忙しいからぁ、また今度でもいいかしらー?」
「そんなこと言って、コイツが生まれてから一度も見てくれないじゃないか!」
ビシッと私を指差した兄。ごめんよ。姉さんは私の為にミルクを作ってくれているのさ。母は巫女さんの仕事が忙しいみたい。泣くのがめんどくさくなった私は、お腹がすいたら母か姉に顔を向けて声を出すようにしてる。そうすればミルクを与えてくれるし、不快そうな声を出すとオシメを替えてくれる。この時期の赤ん坊として変かどうかは分からないけど、あまり気にしないことにした。現実逃避。
てか、この村?国?は忍者だらけなのかな。それとも家族だけだろうか。父がクナイや手裏剣や日本刀等を身につけているのをよく見る。

「えっとぉ、私は手裏剣苦手だしなぁ〜。復帰した時に鈍ってちゃ駄目だから、自分の修行もしなきゃいけないしぃ……。他の人に頼みなさいねん」
父と姉は戦う感じの仕事をしているんだと思うけど、姉は私の為に休みをとったみたいだ。その代わりに母が神社にいる時間が多くなった。
でもさ、姉は多分十歳かそこらで、兄も五歳ぐらいなんだけど。こいつらこの歳で一体何してるの……。軍人や暗殺者とかじゃなくて、ただの狩人だと思いたいけど……違うよね。この世界にも魔物は居るのかなぁ。
「父さんは任務ばっかりで全然帰って来ないじゃないか。母さんも本堂に篭りっぱなしだし。」
「でもねぇ……」
「……もういい。イタチのとこ行ってくる!」
「あ、シダレ!」
イタチ?変な名前。兄、シダレさんは拗ねて家を飛び出してしまった。
姉を私に取られたみたいで面白くないんだろうな。そういうところは子供っぽいんだけど、修行熱心なだけあってシダレさんは戦ったらとても強そう。どんな五歳児だよ……。
てかこの姉、喋り方が間延びしすぎ。

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