交響曲第1楽章

□03 牧場
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木造建築の家。簡素な道に、小さな畑がたくさん。家畜も放牧中だ。牛、豚、鶏。よしよし見覚えがある生き物がいるぞ。あ、学校まで木でできている。コンクリートはないのかな。
「ここがイセリア……」
のどかで温かな村だと一目で分かった。だけど……。
「神子様に無事神託が下ったのだねぇ。ありがたやありがたや」
「今回こそは……どうか成功しますように……」
「この日をずっと待ち続けていたよ」
「お母さん!これで世界が救われるんだよね?」
村人の会話はコレットのことばかり。

「ねぇジーニアス。神子と世界再生って、何?」
「……それも忘れちゃったんだね」
ですよね……。この世界での一般常識が分からないんだから、重度の記憶障害に思われるよね。哀れむような悲しい瞳がツライよ。そう言えば、神子の説明も戦闘続きで聞けなかったなぁ。
「簡単に説明すると……神子が各地の封印を解き、最後に救いの塔で祈りを捧げると、マナが復活してディザイアンが封印される。その為に神子が旅立つことが、“世界再生の旅”と呼ばれてる。でも800年も失敗してるんだ」
「800年!?そんなに昔からあるんだ……。で、マナって……何?」
「……生命の源。酸素のような物だよ。マナが無ければ人もエルフも魔物も植物も、何も生きることが出来ない。異常気象も起こる。今は失敗続きでマナが増えることがないから、枯渇してる。だから食べ物が育たず、皆貧しくて苦しんでる」
「800年前は……成功したの?いつからこの風習?はあるの?」
「解かなきゃいけない封印は何個かあるんだけど、1個解く度にマナは増えるんだ。800年以上前は、成功なのか分からないけど、それなりに封印を解き進めてたと思う。でも最近は、全然旅が進まないうちに神子が亡くなって失敗してる。いつから始まったのかは分からない。分からないほど昔からあるみたい」
つまり、封印解放が上手くいってない今は世界的な飢饉、か……。
「神子はディザイアンに殺されてるの?」
「……うん。魔物の場合もあるけど、ほとんどは……」
「そんなことさせねぇ!」
「ロイド……。僕だって……そんなの嫌だよ」
世界の命運を握る神子……。今回こそは成功して欲しいと人々は願い、失敗していく。それが何百年も続き、世界は荒れていく。神子には重い期待が圧し掛かる。
ならこの村人達の会話も納得。だけど……生まれてから今まで、コレットはどんな思いをしてきたのだろう。

ロイドがある家の玄関を開ける。ノックしてないことをジーニアスに突っ込まれながらも、私達は踏み入る。
神子様の家だからどんなに豪勢かと思いきや、周りより少し大きいだけ。この世界はどこもこんな感じなのかな。近代化してない。インターホンもなかった。ワープゾーンがあったりソーサラーリングがあったり、魔術での高度な技術はマーテル教などの一部分にしかないのかな。

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