交響曲第1楽章

□02 神託
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出てきた魔物は、またもやスライムが1体に、ゴーストが2体、それとスパイダーという名の魔物だった。
うーん……やっぱり英語?でも私が喋ってるのは日本語だしなぁ。……自分の喋っている言葉を日本語だと認識しているだけで、そうではないのかも……?もう良く分かんない。自分が此処に居るだけで不思議なんだ。考えても仕方がないとして、私は柄を握り締めた。

「ジーニアス、ゴーストの足止めしとくね」
「ありがとうコレット」
精神体や霊体は魔術で攻撃した方が効くらしい。ゴーストって何?ふよふよ浮いてる。こんな魔物いるんだ。え、まさか本当の幽霊じゃ……ないよね?
コレットがゴーストへと駆けだした後、ジーニアスは服の内側から剣玉を取り出し……ん?剣玉?え?剣玉だよね。そして、玉を乗せたり棒に入れたりして…………遊び始めた。
「えええええ!?ジーニアス何やってんの!?」
「……?剣玉だけど……」
「そそそれは見れば分かるけど、なんで今!?」
どうしてそんなどや顔なの!?
「ああ。剣玉しながら詠唱すると、集中しやすいんだ」
「――……へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。……ええっと、つまり……魔術師にとっての杖のようなもの?と言うことは、今ファイアーボール唱えてたのかな!?
「そうなんだ。邪魔してごめん」
ま、まさか武器が剣玉だとは思わなかった。今までの詠唱中も剣玉してたのかな。自分の事ばっかで全然周り見てなかったや。というか剣玉上手いな……。

柄を、強く握り直した。掌からじんわりと汗が出てくる。
ロイドとコレットは、それぞれゴーストと対峙している。小さくて中々素早そう。
手強そうなスパイダーは、クラトスさんが。ごわごわとした黒い毛。小刻みに動いて糸を吐く口。……見たことも無い巨大な蜘蛛。気味が悪くて直視できなかった。こんなんじゃ駄目だ……。

そしてやっと、柄から刃が出た。私はホッと息を吐く。でもすぐに、前を見据える。1匹だけぼーっとしてるスライム。あれが私の相手だ。一番弱そうな魔物を、私に残してくれたのだろうか。
戦うとは、目の前に居る魔物を殺すということ……だよね。魔物を説得とかは出来ないのかな……出来ないんだろうな。殺らなきゃ殺られる……か。この剣で、斬らなきゃ。
視界に入った刃に、違和感を覚えた。明らかに、前とは違う。
これは……どういうこと?
金属特有の冷たい光沢が見当たらない。左手で目を擦り、瞬きを繰り返す。が、現実は変わることがない。
どう見ても……尖った石ぃぃぃ!!?じゃないかー!!
な……んで。さっきは真剣だったよね!?

混乱したけど、うだうだ悩む時間はない。既に皆から遥かに後れをとっている。
私はスライムに向かって剣を構えたまま走り出した。あれ。もしかして剣先上げたまま走るのって格好悪い?普通は斬る寸前に上げる?ところで、斜め上から斬りつけることって袈裟斬りって言うんだっけ。ああ剣道か剣術習っとくんだった!

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