交響曲第1楽章

□15 王廟
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アスカードから歩くこと1週間ほど。ようやく石版が示す場所、バラクラフ王廟に到着致しました。
山に囲まれた平地に、朽ちかけた石造りの建物が鎮座していた。
「まさに遺跡って感じ……」
高さは2〜3階建てぐらいだが、敷地面積がとてつもなく広そう。外周をぐるっと回るだけでも、半日は潰れそうだ。

「観光者や行商人もいるみたいだね」
ソダ島のように、ツアーが組まれるほど栄えている観光地ではないが、ポツポツと遺跡を見上げている観光客はいた。
なんで不人気なんだろう。遺跡自体は見ごたえはあるが、辺鄙なところにあるからなぁ。東の大陸の最東端なんだよね、ここ。イセリアは西の大陸の北西部にあるから、我々、世界一周しかけてる……。すごい……。

道中荷物を運んでくれていたノイシュとは遺跡の前で別れ、中へと進んだ。
試練が始まるので、おそらくいつも通り遺跡の中には魔物がいっぱいだろう。ノイシュが怖がっちゃう。

しかし遺跡の正面にある階段を昇るも、遺跡の中に続く入り口は見当たらなかった。
「げっ、行き止まりかよ〜」
肩を落とすロイド。
「う〜ん…奥に扉っぽいのはあるけど、びくともしないね」

扉の前に祭壇らしき台はあるが、いつもの神託の石板は見当たらない。念のため、コレットが祭壇に手を置くも、何の反応もなかった。

「ふむ……」
遺跡を前に、いつにもまして真剣な眼差しのリフィルは、カバンの中からアスカードで入手した石板(バラクラフの地図)を取り出し、祭壇へと近づいた。
すると、祭壇から、見覚えのある神託の石版が出てきました。

「おおっ!」
「どうやらバラクラフの地図に反応しているようね」
「やっぱりここが封印なんだな」

コレットが神託の石版に手を置くと、扉が動いて、遺跡の中へと続く入り口が出現した。

「よし、注意して進もう」
中は薄暗いが、石の合間から光が差し込んでいるのか、暗闇ではなかった。
「風の音がする……」
コレットが言う通り、奥から風の流れる音がした。ほかにも入り口や窓があるのだろうか。



「うわ!またトラップ!!!」
あぶなっ!床から針が出てきたり、動く針の板があったり、侵入者用のトラップがたくさん見受けられた。
うわーーーまじで怖い!!もろにあたると、串刺しになって即死しそうだ。
ちなみに、みんなは華麗によけているが、私はさっきから少し掠っている。痛い。

「サクラ、気をつけろよ〜。それにしても、ここは他のところに比べても、明らかに遺跡だよな」
「そうだ!ロイド!よいところに目を付けたな!」
「げ!リフィル先生!遺跡モードだったのか?」
「変な名前をつけるな!ここは王廟というだけあって、過去の王族の墓になっている。だから盗掘を防止するためのトラップがあるのだ」
なるほど〜〜。
「王族って?シルバヴァラント王朝?」
たしか、800年前に滅びた王朝だっけ?
「いや、ここはその名の通り、バラクラフ王朝だ」
「バラクラフ王朝は、4000年以上前に滅んだ王朝だって言われてるんだよ」
「よんせんねん…?????」
地球だと、紀元前2000年??それっていつの時代だ…?日本だと縄文時代?
「アスカードもバラクラフの一部だったんだよ」
「へぇ…!!確かに言われてみれば、中の造りが似ているような……?」
アスカードもそんな古い時代の石舞台や壁画だったんだ。セイジ姉弟は物知りだねぇ。……一般常識なのか?

「サクラって、ほんとに歴史が苦手なんだねぇ……」
「ウッ」
「でも、サクラは数学や物理学は得意だよね?この前宿題の解き方教えてもらったけど、すごく分かりやすかった!」
「コレット〜〜。私こそ、化学や生物教えてくれてありがとね!」
数学や物理は前の世界と共通しているけど、科学や生物は違うんだよなぁ……。共通している物質や生き物もいるんだけど、初めて聞くことのほうが多い。

ちなみに、知識に偏りがあることに対して、リフィルから疑惑の目が向けられている!痛い!
本当は記憶喪失じゃないってこと、いつか伝えたほうがいいのかなぁ……。

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