交響曲第1楽章
□14 儀式
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「へえ。お前、器用だな。制御不能の『ブレイカー』を止めるとは……」
「制御出来ないもんを作るなっつーの」
ロイドは無事に爆弾の解体を終えた。よかったー!
「こらっ!そこの者!」
初老のおじいさんの声があたりに響いた。
「石舞台は立入禁止じゃ」
その言葉に、2人の男性は焦って互いの顔を見合わせた。
「いけません、町長です」
「やべぇ。逃げるぞ!」
一目散に逃げていく2人。
「先生!面倒そうだぜ。早く逃げよう!」
「しかし、まだこの石舞台の構造を……」
「いーから行くんだよ!皆も早く!」
渋るリフィルを引きずり、私達も石舞台から退散した。
「ああ……。もっと調べたかったのに……」
「さっきの二人は一体何者なんだ」
「遺跡を壊してどうするつもりだったんだろうね」
「そう、遺跡よ!彼らに遺跡を壊すなんて愚かな真似をやめさせなくては。行くわよ、ロイド」
街で聞き込みをした結果、どうやらハーフエルフの青年はハーレイさん、知的で大人しそうな青年はライナーさんと言うらしい。そして、今晩、石舞台で儀式とやらが行われるらしく、その儀式の踊り手がアイーシャさんという、ライナーさんのお姉さんなんだそうだ。
町の人は、儀式について詳しいことを話そうとしなかった。しかし、【生贄】という単語がしばしば出てきて……なんとも血生臭い話が隠れてそうだ。
ハーレイさんとライナーさんの家を特定した私達は、2手に分かれてそれぞれの家に向かうこととなった。私は、ロイドとコレットとジーニアスと一緒にライナーの家へと向かった。組分けは公正なグッパだよ!ちょっとちびっこ率高めだけど!この世界でもじゃんけんはあった。
あ、ちなみに旅の荷物は、石舞台に上る前に宿に預けたよ!
ハーレイさんの家は、街の外れのほうにあった。人気が全く無い、随分と寂しい場所だった。蔦がたくさん巻かれ、自然と同化しつつある小さな家は、どこかロイドの家に似ている。ただ、こっちはちょっと不気味だ。
「魔女の家って呼ばれてたよね……」
聞き込みをした結果、街の人はみんな「ハーレイは魔女の家に住んでいる」って答えた。どういうことだろう。
「すみませーん」
ロイドが声をかけ、扉をノックした。
「はいどうぞ。空いてますよ」
扉の向こうから、女性の声がした。促されるまま、私達は扉を開けて中に入った。
室内は少し薄暗く、消毒薬や漢方といった薬品の臭いが充満していた。グミの甘い香りも。薬屋さんだろうか。部屋には大小様々の棚が置いてあり、瓶詰めの液体や、薬草類が陳列されている。
背の低い棚の向こうには、深碧の長い髪をしたお姉さんがいた。髪と同様の色を持つ瞳がとても綺麗で、とても妖艶なな趣きがある。あー。これは確かに、魔女の家だ。
「はい。何の御用かしら。お客さん?」
「ハーレイさんはいますか?」
「ハーレイ?朝から見てないわ。ライナーのところじゃないかしら」
そう答えた女性は、ハーレイさんと同様、尖り耳だった。ハーフエルフかな?エルフかな?
「ありがとうございます。……ところで、こちらは薬屋さんですか?」
さすがに、ハーフエルフですか?それともエルフですか?とは聞けなかった!気になるけど、いきなり種族聞くのって失礼だよね……?
「ええそうよ。良かったらどうかしら?巷のライフボトルなんかよりも、よく効く自慢の薬もあるわよ〜」
当たってた!ただし、今回の目的は買い出しではないため、買うことはできず、丁寧にお断りをした。
この旅の財布はリフィルが握っているのだ……!旅の資金は基本的にリフィルが管理しており、みんなが摂る食事や宿、戦いに必要な装備品などはそこから出している。街での買い食いや個人的な服などは、リフィルに貰うお小遣いで各自払っている。お小遣い上げてほしい。
資金は、出発の時にファイドラさんから頂いたお金と、魔物が落とす戦利品(ガルドや革や牙など)から捻出している。
もちろん、大人組(リフィルとクラトス)やリアは、個人的なお財布にがっぽりお金入ってそうだけど……。私含め後のちびっこは、自由に使えるお金があまりないのだ……悲しみ……。
また買いに来る(多分)ことを伝え、ハーレイさんの家を後にした。魔女さんは、ハーレイさんのお母さんかお姉さんかな?お祖母さんかもしれない。年齢不詳すぎる。エルフやハーフエルフって1000年くらい生きる長寿らしいから、見た目だけでは年齢がよくわからない。
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