春色の軌跡

□番外編 分家の従兄妹と
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「こら!神子様になんてことを仰るの!」
会合が終わったのか、中から人が出てきた。ウツギを叱った彼女は、そばに来て、私への謝罪の言葉と供に、深々と頭を下げた。
「神子様、申し訳ございません。ほら、あんたも謝んなさい!」
「ぐえっ」
ウツギの姉、木乃花バイカさんだ。ウツギの頭を押さえつけ、無理やり頭を下げさせた。
気にしていないので、頭を上げるように伝えたら、バイカさんはほっとしたように胸を撫で下ろし、ウツギは不満そうに口を尖らせていた。

「カスミも、ごめんね」
そう言って、バイカさんは隣にいるカスミさんに声をかけた。2人は同い年で、アカデミーでもとても仲良しだったらしい。カスミさんは巫女を継いだ際に忍を引退してしまったが、バイカさんは現在中忍だったかな?あれ、カスミさんも中忍になった後に引退したっけ?

「いいわよ〜。子供同士の喧嘩だものねぇ〜」
なんだか、親同士の会話を見ているみたいだ。まぁ、私も、ウツギも両親がいないので、長女の2人が親代わりになっているので、間違ってはいないのだが。
私達の両親も、彼らの両親も、九尾事件の際に亡くなってしまったのだ。そのため、姉弟で、従兄妹で、お互いに助け合って生きている。

「くそ、姉ちゃんも、こいつのことばっか庇って!」
まぁ、ウツギと私の仲は悪いけどね。てか、庇うも何も、そっちが悪いのでは……?
「そんな汚い言葉遣いしないの!」
ウツギの頭に、バイカさんのげんこつが降り掛かった。
バイカさんは、よくできたお姉さんって感じだ。間延びした、とてもおっとりとしたカスミさんとは違い、とてもテキパキとした、しっかり者である。
ウツギは、まぁまだ5歳で、姉に育てられたというのもあり、重度のシスコンである。
私が生まれたばかりのころの、シダレさんに似ているなぁ。

2人の姉達はとても仲が良い。
お互いの両親だけではなく、その姉達も、同じ時に亡くなってしまうことになるとは、この時の私はまだ知らなかった。

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