春色の軌跡

□19 無気力が超加速
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あれからと言うものの、毎日お墓参りと、勉学や鍛錬で月日が過ぎて行った。
アカデミーは欠席も多かったが、昔とはちょっと過ごし方が変わった。今までは、考えて気を張ったうえで平均点そこそこになるように手を抜いていた。しかしそれがだんだん煩わしく感じるようになったので、今は何も考えずに力を抜いている。つまり、適当に気分的に手を抜くようになった。だから、成績にはとてもムラがある。
その結果、お前はやる気を出したら学年トップを狙える成績なのになぁ……と何度担任のイルカ先生にため息を吐かれたかはもう数え切れない。ちなみに学年トップはサスケだ。そう言えば、イルカ先生って、漫画に出てきた先生だよね?

今日の組手の授業は、初めての実戦練習だった。勝敗の決まる試合形式だ。授業は男女一緒だが、トーナメントは男女で分かれている。
男も女も関係ないと思うけどなぁ……。たまに、男女で授業内容が異なるんだよね。クノイチは、どちらかというと隠密に長ける授業が多かった。華道を嗜んで女らしさを養う、みたいな。そんな本格的な授業ではないが、女として男を誘惑して油断させることができるようになるのが目的なのだろう。私には無理だ。

今回の組手の授業も、適当に受けて、まぁどこか適当なところで負ければいいかな。と思っていたのだが、クノイチのみんなが、とても真剣に向かって来るので、私もあからさまに不真面目に取り組むことができなかった。
どこで不自然じゃないように負ければいいのかが分からず、気づけばクノイチで優勝してしまっていた。……まぁいっか、たまには。

男子の方も、優勝が決定したようだった。
そこで野次馬達が盛り上がり、なぜか男女の優勝者同士で戦うことになってしまった。エキシビションマッチ。

私と、うちはサスケの試合だ。

……めんどくさい。なんでこんなことになったんだ……。
サスケは女子から黄色い声援を受けていた。よっ、モテモテ!
一方私はと言うと、サスケのモテ具合を気に入らない男子供から、期待の眼差しを受けている。ぜひあいつをぶちのめしてくれ!みたいな。

「両者、前へ!」
先生のコールで、しぶしぶ立ち上がった。
……うわぁ。サスケはめちゃくちゃやる気じゃないか……。土俵に立って、私を真っ直ぐと見据えるサスケはとても久しぶりだ。
サスケとは小さい頃に何度も組手をしたことはあったが、その時とは全く雰囲気が違う。あの時は人懐っこくてとても可愛らしかったけど、今はもう氷のように冷たい目つきで取り付く島もない。悲しい。

どうしようかなぁ……。

この試合の勝敗について悩みかけて、すぐに気づいた。
違う、私は馬鹿か。悩む必要なんてないじゃないか。勝敗をどうするかなんて、手を抜くかどうかなんて、悩むことが失礼だ。

目の前の彼はとても鋭い面持ちだけれども、真摯に向かってくるその眼差しに、今度は間違えてはいけないと思った。

サスケには、手を抜いてはいけない。それが、かつての幼馴染としての……せめてもの償いだ。


「それではーーはじめっ!」


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