あか×すな

□自殺志願
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いつもは可哀想な位にカンクロウにちょっかい出してはしゃいでいる旦那が、今日はなんだか様子がおかしい。

ひとり寂しく隅っこに三角座りして、面白いほどのどんよりムードでうなだれてる。
ふと顔を上げたかと思えば、口は半開きで死んだ魚のような目を虚空に泳がせている。


うわ…何があったんだ…うん…
こんな旦那、初めて見るぞ…うん…


「だ…旦那…?どうしたんだ…うん?」

「…んあ…?……デイダラか…」


遠い瞳をしたままで、旦那の首がキュルっと回って此方を見る。

かなりご傷心の様子。
これがあの高慢で傲慢なサソリの旦那か、と疑いたくなるような腑抜け具合。


「だ…旦那ァ…オイラでよかったら、話聞きまスけど…?」

「……聞いてくれるか…実はな…ふ…ふふっ…」


ヤクでもキメたのか、この人は。


「大丈夫っスか旦那…本当、何があったんだ…うん?」

「ああ…ふ…あのな………昨夜…カンクロウと…へへ…ヤったんだが…」

「アレ、よ、よかったじゃないっスか旦那。」


いつもムゲにされてもボロクソ言われてもそれさえも楽しげにカンクロウのケツを狙ってる旦那が、せっかく思いを遂げられてさぞやご満悦かと思いきや、何故こんなにメランコリックなやけっぱちになっているのだろう。


「ハハハ…ああ…確かによかった…すげーイイ抱き心地でよ……ハハハ…」

「じゃあなんでそんなザマなんスか…?」

「あー…ソレがな……」


旦那は口をカタカタパクパクさせながら話し出した。





珍しくメルヘンゲットに成功し、引っ張り込んだ褥の上。
愛しいカンクロウの中に己の猛りきった欲望の塊をねじ込んで、待ちわびた交接の時。


「あー、カンクロウ、ああ…っ、マジ気持ちイ…最高だぜお前…」

「…っ…ん…」

「はぁ、あぁ、かんくろっ、うぁ、はぁ、たまんねェなクソ、おぁ、ああ、カンクロウ、この、ド淫乱がぁ、ピンク過ぎんだろテメェ、あァ、かは、あ、」

「…ふ…」

「はぁっ、あっ、か、カンクロウ、カンクロウ、かんくろっ、すげぇ締まる、お前、こっち向け、イ、イイ…っ、すげーカワイイ、ああ、その顔、もっと見せろ、くぁ、はぁ、はぁあ、カンクロウ、」

「…っ、」

「カンクロウ、あァ、カンクロウ、も、イきそ、はぁっ、あああ、中に、中に出してイイ?か、カンクロウの中に、出してイイ?なか、あぁ、お前のナカに、出していいだろ?はぁ、はぁ、」

「…う、」

「うぁっ、カワイイ、やべっ、イくッ!!う、あ、気持ちイイ…っ、出る、出るっ、あ、ぁあ…っ!!うはァ…カンクロウの中に…か、かんくろォ…あー…ああ…!!」

「っ…、」

「あ゙ー…ぎもぢいー…はぁ、はぁ…ハァ…ふぅ……カンクロウ………あ…か…カンクロウ…、」

「…ざけんな…っの、早漏!!」

「あ、」

「ゴム付けろっつったじゃん!!?あとアンタ、喘ぎ声うるせーんだよ!」

「あ…ああ…す…すまん…」

「はぁ…独り善がり過ぎ。萎えた。もういい、どけよ、シャワー浴びてくっから。」

「あ…おい、カンクロウ、待て、すまん、オイ、」


無情にも閉まるドア。
百戦錬磨の初敗北。
完全勝利のハズがまさかの判定負け、シーツのリングに叩きのめされた。





「…ってコトになってな…挿入して一分持たなかった…」

「旦那…そりゃちょっとフォローできねーな…うん…」

「…ふ…好きな奴とヤんのがあんなに気持ちイイとは思わなくてな…挿れた瞬間、トんだ。」

「…あー…旦那ってそんな感じするな…うん…それにしても…なんか…言葉が見つからないな…うん…」

「あー…死にてェ…」

「…だろうな…オイラ、我愛羅とそんな事になったらその場で自爆するかも…うん…」

「だよな……カンクロウのケツも掘れたし…もういいかな…死ぬか…ハハ…」


フラフラと旦那は立ち上がって、薬物が置いてある棚へと誘われるように歩いて行き、如何にもヤバそうなラベルの小瓶から注射器で中身を吸い出して胸に当てた。


アララ、本気で死んじまいそうだな…うん。

慌てて旦那の手を抑えて止める。


「だ、旦那、ヤメろって、」

「ほっとけよ…もうオレぁダメだ…」

「カンクロウ悲しむと思うぜ!?」

「そうかなァ…こんなオッサンなんか死んだって…」

「つか、今死んだらカンクロウの中での旦那は、喘ぎ声の五月蝿いセックス下手のオッサンのままだろ…うん!」

「はぐう…っ!!」


余程のショックで手を滑らせたのだろう、がちゃーん、と小瓶と注射器が床に落ちて砕け散った。


「い…言うな…!言うなァア…!!」

「お、落ち着けって旦那!だから、これから!これから本当の旦那の実力をだな…」

「これから?これからがあると思うか!?…ま…また…カンクロウ、してくれっかな…こんなヘタクソなオッサンと…」

「あー…そりゃあ…どうだろうな…うん。」

「うぅぅぅ…こういう時は慰めるモンだろうがァ…!!!」

「だっていくらなんでも…なぁ?」


オイラは我愛羅と初めてヤる時、絶対気をつけよう…うん。

崩れ落ちてまた三角座りで鬱々とし始めた旦那を哀れに思いながら、床に散乱したガラスの破片と毒液を片付けていると、タイミング悪くカンクロウがやってきた。

呑気にチュッパチャプスなんか舐めながら、鼻歌混じりでいい気なもんだ。
オイラと目が合うと、何してんだ、とばかりにのこのこ近付いて来やがった。
棚の下にうずくまる旦那には気付いてない様だ。


「あ、おいデイダラ、その薬!待て、ソレは素手で触んな!!」

「え?」

「ったく、手ェ見してみろ…」


手を取られて、じっと見つめられる。
兄弟だけあって、そんな眼差しがちょっと我愛羅に似ててドキドキしちまった。
恥ずかしくなって手を払う。


「は、離せ!!大丈夫だ…うん!!」

「みてーだな。気ィ付けろよ、ソレ、致死量めちゃくちゃ低いから。体内に入ったら即あの世行きじゃん。」

「あの世行き…」


旦那、本気で死ぬ気だったのかよ…うん。

カンクロウとこのままの状態じゃ、本当に旦那、死んじまうんじゃないだろうか。

此処はオイラが一肌脱いでやるか…うん。


「……カンクロウ、」

「ん?」

「あの…旦那が、すげー落ち込んでんだけど…慰めてやってくれねーか…うん?」

「サソリが?…何で俺が…めんどくせェ。」


そう言って少し顔を赤らめるカンクロウへ、黙って棚の下で凹みまくっている旦那の姿を指し示した。


「うをっ!!?居たのかよ!!!?つか…ホントにすげー落ち込みようじゃん?生きてんのかコレ?もう死んでんじゃ…」

「…さっきからずっとこうなんだ…うん。この薬で自殺計ろうとまでしたんだぜ…うん。」

「じ…っ、自殺!!?……チッ、っとにめんどくせェオッサンじゃん、」


カンクロウは旦那の前にしゃがむと、塞ぎ込んでいる旦那の顔を上げさせて、そのポカンと開いた口へ、自らが舐めていたチュッパチャプスを突っ込んで一言。


「…コレ、俺の気持ち。」


そう言って立ち去った。


え…そんだけ?


「…だ…旦那?」


心配になって棚の下を覗き込むと、其処にいたのはもうあの抜け殻の旦那ではなく、いつもの元気な煩悩オヤジだった。


「ソォラァア!!!!!昨夜は大失態を演じたがソレもこれまで!!!!今夜こそ喉が嗄れ精根尽き果てて腰立たなくなるまでアンアン鳴かせてヒンヒン泣かせてこのオレが快楽地獄を味わわせてやる!!こうしちゃあいられねェ!!準備しねェと!!!」

「だっ、旦那…!?」

「舐めかけってこたぁアレだろう!?互いの唾液が混じるほどの濃厚なキスがしてぇって事だろう!?丸い飴ってこたぁアレだろう!?カンクロウの恥ずかしいアレをこんな風にペロペロ舐めてくださいって隠喩だろう!?」

「…ただ旦那が飴好きだからくれたんだろ…うん?」

「イヤ、オレには分かる!!棒付き飴ってこたぁアレだろう!?カンクロウのエッチなアソコを棒で突いてくださいって隠喩だろう!?口に突っ込んだって事はアレだろう!?カンクロウの淫乱なアレを咥えてくださいって事だろう!?あー燃えてきたァアー!!!」


チュッパチャプスを気持ち悪いくらいねっとりじっくりペロペロ舐めた後、いきなり立ち上がって強かに棚へ頭を打ち付けていたが、そんな事お構いなしに旦那はスキップしながら行ってしまった。

旦那…コンビ組んだばかりの頃のあのクールでアートなアンタは何処へ…


「……なんかオイラ、疲れちゃったな…うん。」


オイラと我愛羅をバカップル呼ばわりするくせに、旦那んトコも大して変わんねーだろ、うん。


まぁ、良かったな、旦那。


……てかこの薬品、片づけてけよ。





頑張れ、デイダラ。

終劇
 

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