あか×すな

□ただいま
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芸術活動という名の破壊工作を終えたデイダラがアジトへ帰宅すると、もう日付が変わる頃だと云うのに玄関先に佇む者がある。


「遅かったな…デイダラ。」

「我愛羅…待っててくれたのか…?」


寒風が身にしみる季節、屋内とはいえ玄関先はやはり冷える。
しかし我愛羅は、いつ帰るとも知れぬ己を其処でずっと待っていたらしい。
元々あまり血色の良くない彼の肌が輪をかけて青白くなっている。


「こんなところで…寒かっただろ…うん…!」

「いや…カンクロウが上着と茶を差し入れてくれたからそれほどでもない。」

「嘘吐け、手だってこんなに冷えて…」


握った我愛羅の手はまるで硝子の様に滑らかで、しんと冷たかった。

心配させまいとしたのだろう、デイダラの手をやんわりと解いて、我愛羅は口元で笑って見せた。


「案ずるな。元より体温は高くない…」


繋ぎなれた手の温度くらい覚えている。

そんなにお前の手は冷たくなかったろ。


「我愛羅、もうオイラのこと待ってなくていいから、先に寝ててくれよ…うん…」

「待っていたのではない…寝付けなかったのでな…月を見ていただけだ。」

「…!…」


見え透いた強がりを言う我愛羅が何だかとても愛おしくて、儚くて、いつか壊してしまいそうで胸が締め付けられる。

こんな遅い時間まで寒い玄関先で起きて待っていてくれるなんて、嬉しい。
嬉しいが、風邪でもひかれたら。

待ってなくてもいい、と言っても強情な彼はさっきの調子だ。

せめて、温かい場所に居てくれたら。

そうだ、それなら。


「我愛羅、頼みがあるんだ…うん…」

「なんだ?」

「オイラが遅くなりそうな時は、ベッドに入ってあっためといてほしいんだ。寒い布団は嫌だからな…うん…」


我愛羅はきょとんとしていたが、理解してくれたのだろう、綻んだ顔をして頷いた。


「分かった。温めておこう…」

「頼んだぜ…うん…!」


自分の帰りを待っていてくれる人がいるというのは嬉しいものだ。
それが誰よりも愛しい人ならば尚更。

外の寒さを忘れさせてくれる温かさをくれる存在に、言い忘れていた言葉があった。


「我愛羅、ただいま。」

「おかえり、デイダラ。」





終劇
 

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