あか×すな
□はじめに
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突如として訪れた暗雲。
砂隠れは暁と名乗る組織に急襲された。
甚大な里の被害は食い止めたものの、その為に風影である我愛羅が拉致されてしまった。
単身それを追っていたカンクロウもまた、我愛羅と交戦した者とは別の一員と戦闘になり、毒仕込みの攻撃を受け、全身麻痺に意識混濁。
カンクロウが目を覚ますと、砂漠に倒れていたはずなのに何故かふかふかと上等な寝台に乗せられていた。
一瞬、里の医療施設に収容されたのかとも思ったが、どうも違う。
ふと見れば、寝台の縁に見知らぬ赤髪の少年が腰掛けている。
その少年が纏うのは、見覚えのある黒地に赤の浮き雲の衣。
暁、だ。
「おいお前、此処は何処だ!?が、我愛羅、風影は!!?お前は誰だ!?何の為に我愛羅を攫った!?」
その少年に掴みかかると、カンクロウは一息に質問をぶつけた。
しかし少年は薄く微笑んで、質問には答えず一言、起きたか、と呟いただけ。
カンクロウは穏やかなその様子に少し冷静さを取り戻し、掴んだ少年の肩を離した。
「一気に聞いたってわかんねーよな…お前、我愛羅を攫った奴とは違うみてーだし。」
すると、少年は嘲るような笑い声を吐いて暁の衣を脱ぎ始めた。
「お前、何して…」
「もうオレを忘れちまったのか?…カンクロウ…」
「え…?な、なんで俺の名前…もしかしてお前…!?」
衣が床に落ち、現れた少年の素肌は人のものではなく、傀儡のそれ。
左胸に穿たれた穴にはめ込んであるパーツには『蠍』の一字。
先程の姿とは大分違うが、話しぶりやこの身体を見れば、思い当たるのは一人しかいない。
「テメェ…赤砂の…!!」
「思い出してくれた?…つっても、この姿で会うのは初めてだな…」
さも可笑しそうに喉の奥を鳴らしている憎き敵の姿に、カンクロウは湧き上がる殺意を感じていた。
しかし、今はそれよりも我愛羅がどうなったのか、それが知りたい。
「我愛羅は!?我愛羅をどうしやがった!!?」
「はは…怒るなよ、カンクロウ…お前の大事な弟は無事だ…手荒な真似をして悪かったな…こっちも仕事なんだ…」
「我愛羅は、無事なのか…?」
「ああ…会いに行くか?」
敵の言う事など信用してなるか、そうは思えど我愛羅が無事であると聞かされては、黙っていられない。
現にこうして自らも生かされているのだ。
一度はなくしたと思った命だ、騙されていたとて、だからどうしたというのだろう。
我愛羅が死んでいたならそれで、せめて一矢報いて自分も死んでやる。
生きているなら、それで、それは後から考えよう。
兎も角今は、僅かな可能性にも縋りたい。
カンクロウは、我愛羅に会わせてくれ、と首を振った。