かんたん!!
□the Hump
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どうすっかな…
オレは久方ぶりの窮地に立たされていた。
それと言うのも、カンクロウがお泊まりしにきた事に端を発する。
一緒に飯食って、風呂入って、そんで今、ひとつの布団に寝っ転がっている訳だが、
困った事に、勃起しちまってる。
風呂入ってる時は何とか我慢できたんだが、スヤスヤ寝息を立ててるコイツを後ろから抱き締めてたのがいけなかった。
ヤツのケツの割れ目に、オレのアレが丁度当たってる。
柔らかいケツはたまらなく肉欲をそそり、密着してる背中、腕、オレの手のひらが置かれた腹、どれもが全て、劣情を催すには充分過ぎる程無防備にさらけ出され、次第にオレを誘っているようにしか思えなくなってくる。
肉付きのよい身体、今すぐメチャクチャにしてやりたくなる。
だが我慢だ。
こうしているだけで幸せだ。
これ以上望んではいけない。
そう、こうして、ヤツのケツに股間が当たってるだけでいいじゃねーか。
なんて自分を宥めすかしていたのだが、ヤツのケツにオレのアレ、なんぞと反復してりゃあ自然に欲が募るのは当たり前だ。
しかも、カンクロウがもそもそ寝返りをうつ度に擦れる。
理性が削られて、ソコに刺激が加われば、男なら当然結果は見えている。
そんで、こんな状態になっちまってるって訳だ。
カンクロウを離せばいいって事は承知してる。
手を離して、寝返りでもうって背を向ければいい。
そう分かってはいるのだが、身体は正直なもので、動いてくれない。
カンクロウのケツにアレを押し当てたまま、オレはオレの中の天使と悪魔のステレオ攻撃に遭うのだった。
此処で欲望に従っていいのか?
我慢すべきじゃないのか?
そっと抜け出して収めて来た方がいいんじゃねーのか?
本能に従っとくべきだろ?
お泊まりなんて大チャンス逃すのか?
このままヤっちゃえよ。
大丈夫だって、どうせ将来はそういう仲になるんだし、少し早まっただけだ。
そうだよな。
熟睡してるし…まぁ…ケツに擦って抜く程度なら、起きやしねーだろう。
ちょっと位、腰振っても、起きないよな?
ごめんな、カンクロウ、すぐ終わるから。
パンツをズラし、パジャマ代わりのスウェット越しに、ゆっくり、擦り付けるように、腰を動かす。
起こさないように、極力、慎重に。
普通こんなんじゃ刺激が緩くて抜けやしねェ。
だが恋とは恐ろしいもんで、カンクロウの後ろでこんな事してるって思うだけでオレの股間はガチガチになっていく。
気付かれたらどうしよう?
気付かれたら最悪だ。
だが、気付いてほしいとも思う。
お前でこんなに興奮してるんだって、こんな変態じみた事しちまうくらい好きなんだって、知ってほしい。
軽蔑を込めて冷たい視線を浴びせられるのもいいが、やはり受け入れてほしい。
オレの想いを、オレ自身を、心と身体で受け止めてほしい。
でも、まだ、
それは怖くて、
「はぁ、あ、」
やべ、声出てる。
けど腰は止められなくて、
声が抑えられないならどうせ気付かれちまうんだ、それならいっそと、カンクロウのうなじに唇を押し当てた。
軽くキスするつもりだったんだが歯止めが利かない。
キツく吸ってキスマークを作り、うなじから耳へ舌を這わせた。
その行為が余計にオレの理性を刈り取り、ますます大胆にさせていく。
「はぁ…かん…くろ…っ!」
耳へ頬へキスを落としながら、カンクロウをしっかり抱きすくめ、ケツの割れ目にオレ自身を擦りつけてガクガク腰を振る。
くそ、気持ちいい、
ああ、中挿れてェ、気持ちイイだろうな、
キツキツのカンクロウの穴、
「く…っ、かんくろ…ッ!好きだ…好きだ…!」
腰止まんねーよ、カンクロウ。
オレ、お前でこんな事してるんだぜ、知らなかっただろ?
頼むから起きてくれるなよ、気付かないでいてくれ。
もうすぐ、終わるから。
「カンクロウ、カンクロウ…イく、イく…っ、う、あぁ…ッ!!」
カンクロウを抱き締め、快感に震えながらスウェットの中に射精する。
「はぁ…はぁ…許してくれよ…カンクロウ…」
頬にキスしてそっと囁き、シャワーを浴びに行く。
熱いシャワーが気持ちいい。
身体から毒気が抜けていくような気がした。
不快に濡れた下半身も清められて、憑き物が落ちていくような。
だがそうして平静を取り戻しちまえば、先程の行為に改めて戦慄する。
オレは性懲りもなく何て事をしていたんだろう。
一度ならば、気の迷いだと少しは自分を弁護してやれるかもしれないが、こう度重なってはもう、自分を擁護しきれない。
またやっちまった。
これで何度目だ。
寝てるアイツに欲情して、こんな事しちまったの。
アイツが泊まりに来る度に、アイツと一緒に寝る度に、自分を抑えきれなくなってこんな行為に走っちまう。
その度に反省し、もうすまいと誓う。
だが、その度に誓いは破られ、結局オレはシャワーを浴びながら今度こそは、と誓いを立てる。
きっと、また破られる事になる誓いを。
…幸い今回も気付かれなかったが、これじゃあ、いつか…
オレは溜め息を吐きながら、シャワーを止めた。
終劇