迷子の体

□32影
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「黒子どうかしたか?」




「いえ、今…」



彼女に会いました。



言いかけた言葉は最後まで言うことは出来なかった。




「ちょっと、待ってくれ…右から何か…」


火神くんが言葉を遮り
右を見ると、通路の壁に影がうつっていた。



「人…か?」



様子を伺っていると影は大きくなり
こちらへと近づいてくる。



このままだと、あの人影は角を曲がり
こちらに来る。


しかし、今まで出会った化け物はどれも体の一部


今回は人のかたちをなしている。


もしかすると、僕達の他に誰かいるのでは?




「どうするの赤ちん?」




「一度、人影の正体を確認する。もし、あの角を曲がって出てきたのが化け物であれば、走るぞ。」


足に力を入れて
影が来るのにそなえる。






ゆっくり、とこちらに来る影




角を曲がるまで






3秒







2秒






1秒

















「消えた・・・?」




確かに角は曲がった筈…
それなのに、影の正体は現れない。



「あれれー?いないねー」




「そんな筈は…」


突然、消えるなんてありえない話だ。

少し、様子を伺うために
火神くんから貰ったモップを握り締め
2、3歩前に進む。




左手には先ほど咲さん達が降りていった非常階段があり
緑のランプが灯っている。


ランプに照らされて、壁に僕の影がうつる。





「・・・!?」


突然、金縛りにあったように
体が動かなくなった。


何故?、と唯一動く目で周りを見ると
壁には僕の影ともう1つの影がうつっていた。



影は僕の影をしっかりと捕まえている。




「おい、黒子どう・・・「来ないで下さい!!」」


このまま、他の3人が近づいて
僕と同様、ランプに照らされて影が壁にうつると
この影に捕まってしまう。



「影を…見て・・く…だ・・っ!」



これ以上喋らせないように
影は僕の首を掴む

呼吸も出来ず、
意識が朦朧としてきた。





その時、一瞬だけ
頭の中に何かが流れ込んでくる。






「影…!そうか・・・!」



赤司くんが僕の言葉の意味に気付いたのか
影がうつらないギリギリの所まで近づき
鋏を投げた。



耳元でパリン!と音が鳴り
体をおさえていた力も抜けて、座り込み
肺に酸素を取り込む。


意識がぼやける中
流れ込んできた何かが頭をめぐっている。



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