迷子の体

□10悲鳴
1ページ/1ページ



「上半身しかない奴が、何か言いながら追いかけて来たんスよ!!目は無いし、腕も無いから、這いつくばって追いかけて来たっス!」


必死に身振り、手振りで説明するが
私の頭はすでにパンク寸前である。



「それは何処で会ったんだ?」



「2Fのフロアっス」



「てことは、さっきの用具室の前を通ったのって…」




「どうやら、俺が1Fであった下半身の奴では無くて、涼太のいう上半身だろう。」


だから、用具室の前を通るとき
ズルズルと引きずるような音がしたのか。


それに、化け物に捕まってしまったら
一体どうなるのだろう?



「何か言っていたみたいだが、聞き取れたか?」



「怖すぎて、聞く暇無かったっスよ」



「ぶつぶつ声なら、近くまで行かないと聞こえないしね」


うーん、と頭を3人で傾げながら考える



やはり、ここはよくあるベタな展開の
゙化け物を倒ずという選択肢しか無いのだろうか。

倒したとしても本当にここから出れる確信は無いが…


「とりあえず、他の3人を探しに行く?このまま、考えてもわからないし……」



「そうだな、探しに行こう。」



「あ、でも救急箱があるから先に咲っちの足の手当てをした方が…」


チラ、と私の足を見て
片手には救急箱を持つ黄瀬くん


歩けるとはいえ少し痛みがある


湿布くらい貼っておいた方がいいだろう。

黄瀬くんから救急箱を受け取り
足の手当てをしようと靴下を脱ぐと
やはり少し赤くなっていた。


「赤くなってるっスけど、本当に大丈夫っスか?」



「うーん、痛いけど、そんなに気になる程度ではないし」



「無理はするな。テーピングも巻いておいた方がいい。」


赤司くんが救急箱からテーピングを取り、渡される。

テーピングまで巻いたら
いよいよ、重症者に見えてくるじゃないか

でも、今から何が起きるかわからない

念には念を入れておいた方がいいだろう。













「よし、出来た」



しっかり、テーピングを巻いて靴下をはく
我ながら短時間で上手く出来たと思う。



「ごめんね、待たせちゃって」



「いいっスよ。それに咲っち、俺よりテーピング巻くの上手いし早いっスね」




「まあ、長年やってきたからね。それと、救急箱持っていく?」


私みたいに今後、怪我をする人がいるかもしれないし
あった方が便利だと思う



「そうだな、今後必要になるかもしれない。持っていった方がいいだろう」




「そういえば、さっきナップサックみたいな奴がロッカーにかかってたっス」


ほら、とロッカーからナップサックを取りだして見せる


それに救急箱を入れると
丁度良く入り
これを、かるって動くことができそうだ



「んじゃ、そろそろ行こドタドタ「おい!やべーぞ!!」何事っすか!?」


部屋の前をすごい勢いで影が通り過ぎていった。

言葉からして
かなり危険な状態になっているのだろう。


「追うぞ」


赤司くんのその一言で
私達は部屋から飛び出した。



.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ