天女

□04
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寝ても覚めても、元の時代に帰れない。
夢なら本当に覚めてほしい。
衣食住が問題ない今、思考はどうしても他の事へ向かってしまう。
私がいなくなったことで、元の世界ではどうなっているのだろうか。
考えても仕方ないことは分かっているのに。

今日も野村先生が朝食を運んできてくれた。
時間がもったいないからと、野村先生もこの部屋で一緒に食事をするのが当たり前のようになってきた。
もうこの世界に来て数日が経つけれど、学園が私を信用する気配はない。

「夕夏…」

先生が気が重そうな声を出した。
こんな声は初めて聞くかもしれない。

「実は今日、大掛かりな実習が行われる」
「実習ですか」
「その引率や監視で…ほとんどの教師が出払ってしまう。今まで君には常に誰かが監視に付いていたのだが、今回ばかりは君の監視がなくなる」

確かにお風呂に入るにも、シナ先生と一緒に入って、外で野村先生が待機しているようになっていた。
ん…でもこの部屋で着替えてた時とか…え、もしかして…

「あの、先生」
「なんだ?」
「もしかしてこの部屋で着替えてる時も、誰かに監視されてたんですか?」
「…さすがに見てはいないはずだ。聞き耳は立てていただろうが」

…まぁ、深くは聞かないでおこう。

「それで、今日のことだが…」
「はい」
「昼食はヘムヘムが届けてくれるそうだから、今日も部屋から極力出ないでくれ」

先生の話によると、学園に残るのは学園長先生とヘムヘム、道具管理主任の吉野先生、事務の小松田さん、食堂のおばちゃんだけらしい。

「戻るのは日が暮れた後になるかもしれない」
「はい、わかりました。がんばって下さいね」

なんだか元気がないように見える。
がんばってくださいとは言ったものの、返ってきたのは気のない返事だけだった。





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