「う〜ん・・・」

少し寝すぎたかな、などと思いながら俺はベットから出ることにした。まだ、正月三が日で劇場は休みとはいえ、本来の任務である帝都の防衛には休みがあるわけないし、何より支配人なって間もないので、仕事を早く身に付けるためにもなるべく休みの日にも働くことにしているからだ

「・・・お、おはよう、た、隊長。」

ふと、聞きなれた声が聞こえた。しかし、この時間にここで聞こえるわけは無いのだ。でも、振り返ってみるとそこにいたのは――

Present for you!

話はさかのぼって、早朝、大神がまだ眠っている間のことである。
サロンには、花組メンバーにかえでとすみれを加えた9人がなにやら会議をしている。

「どうだった、マリアはんたちの方は?」

どうやらまとめ役である紅蘭が、マリアとカンナに聞く。

「ばっちりよ。S席5列目、ちょうどセンターよ。」

「内容もマリアが選んだからな。たぶんOKだぜ。」

「完璧じゃないですか!」

さくらがおもわず声を大きくする。

「おっしゃ、これで第一段階はOKや。さてと、車の方はホントにええの、すみれはん?」

すみれが、いかにもと言うようにうなずく。

「おーっほっほっほっ。車の一台や二台、私がお貸ししますわ。」

「うん。これで、移動手段も確保できた。」

レニがメモにチェックしながらうなずく。

「ねぇ、お兄ちゃんまだ起きないよね?」

アイリスが、かえでに聞く。

「そうね、あと二時間くらいかしら?」

「じゃ、まだ大丈夫だね。」

満面の笑みを浮かべてうなずく。

「そういえば、さくらたちのほうはどうだったんだい?」

カンナがさくらと織姫に聞く。

「心配ナッシングで〜す。」

織姫が自信たっぷりにうなずく。

「服は、織姫さんが選んだから大丈夫ですよ。私はほとんど付き添いでした。」

さくらも笑顔で言う。

「よし、バッチリやな。・・・かえではん、例の件は?」

紅蘭が、メガネを光らせる。

「ふふふ、バッチリよ。」

かえでがポケットから鍵を取り出しながら言う。

「よっしゃ、バースデー作戦発動や!」

「おぉー!」

小声の号令と共に、これまたそっとで花組が動く。

「まずは、アレからや!」

紅蘭がそういうと、レニはカンナとさくらにがっちりと両脇を押さえつけられる。

「ちょ、ちょっと、どういうこと!?」

「わるいなぁ、レニ。ちょっとおとなしくしてや。」

そういって、猿ぐつわまでされレニは楽屋へと運ばれた。

「いやな、大神はん一人で行ってもおもろないやろ、ってことでな。」

楽屋までの間に、事の顛末が説明される。

「どうせなら、レニと二人で行ってもらおうってことになったのよ。」

「で、レニにも内緒でな、いろいろ進めてたんだよ。」

「まぁ、私としては一人増えるくらいどうってことは無いですけど。」

「楽しんできてね、レニ。」

「そうですよ。なにせ、デートなんですから。」

「どうせ、プレゼント買ってあるんでしょー、ついでに渡したらいいでーす。」

「おそくても、0時には帰ってくるのよ。」

矢継ぎ早に言われつつも、完ぺきにはめられたと言うことはレニにもわかった。

楽屋に着くと、普段着を脱がされ何かを着せられる。さらには化粧までされ(ご丁寧に、化粧の際にはマントの様に、服を布で隠していた。)今度は大神の部屋へつれられた。

カチャリ

かえでの持っていたのは、マスターキーだった。チケットと封筒を渡され部屋に押し込まれる。

「それでは」

紅蘭が言うと

「ごゆっくり!」

全員が笑顔でいって、扉が閉められた。



「なるほど、そういうわけか・・・。」

「そ、そうなの。だ、だから、そ、その・・・。」

これ以上ないくらいに顔をレニは赤くして口ごもる。

「いいじゃないか、誕生日にレニとデートできるなんてうれしいな。」

「ほ、ほんと!?」

「あたりまえだろ、レニ。」

レニが俺に飛びついてくる。

「だ、大好きだよ・・・、隊長。」

「俺も大好きだよ、レニ。」

「あ、そうだこれ隊長に渡せって。」

「俺に?」

とりあえず、渡された封筒の封を開けてみる

             親愛なる大神隊長へ

               お誕生日おめでとうございます。いままで、大神隊長の誕生日を
              きちんとお祝いすることが出来なかったので、せめて今年はちゃん
              とお祝いしようと思いました。すこし、驚かせてみようと思いこの企
              画をしましたが、どうでしょう?ぜひ、楽しんできてください。
               また、洋服ダンスの方にプレゼントを用意しましたので、見てみて
              ください。きっと、気に入ってくださると思います。
               それでは、ごゆっくり!
                                       敬意と愛をこめて
                                         帝国華撃団 花組一同

               追伸
                  今更かもしれませんが、0時までには帰ってきてください。
                  お泊りはだめですよ!

「ははは、みんなも考えたな。」

そういって、洋服ダンスを開けると中には真新しい外出着が入っていた。

「それね、みんなで選んだの。支配人になったお祝いを兼ねてって。」

「・・・よし、今日はこれを着ていこう。ちょっと、待っててくれな。」

「わ、わ、ぼ、ボクは後ろ向いてるよ。」

「ははは、そういえば、チケットってなんのだい?」

「歌舞伎みたいだよ。大人気でなかなか取れないみたい。」

「ふーん。・・・よし、終わったよ。」

レニの方に向き直る。

「どうだい、レニ?」

「カッコいいよ。似合ってる、けど・・・。」

レニが近づいてくる。

「ネクタイ曲がってる。」

レニが、ネクタイを直してくれる。近くで見るとほんのり化粧したレニの顔が・・・。

「うん、大丈夫。・・・どうしたの、隊長?」

「い、いや、化粧したレニもかわいいなって思って。」

そういうと、一気にレニの顔が赤くなる。

「あ、ありがとう・・・。」

そういうと、レニはそっと俺にキスをする。

「こ、これは、お、お礼だよ。」

そういうと、さっとドアの方に行き、俺を促してくる。

「そ、外にすみれの用意した車があるから、早く行こう。」

「・・・わかった。」

俺は、封筒を内ポケットに入れて部屋を出る。部屋の鍵を閉め、レニの手をとり階段に向かった。途中ふと、みんなの部屋の方を向いた。おそらく、部屋で聞き耳を立てているだろう。

「ありがとう、行ってくるよ!」

ちょっと、大きかったかもしれないがみんなには聞こえたはずだ。

「行こう、隊長。」

レニが、つないだ手を引っ張る。

「ははは、あせらなくても行くよ。」

俺は、今迄で一番うれしい誕生日を迎えた。

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