「ふるさと」



 先日、俺こと大神一郎とレニ・ミルヒシュトラーセはめでたく結婚した。
 それはそれは、とても盛大な結婚式だった。
 そして今日は新婚旅行の初日だ。
「どうだい?懐かしいかい?」
「う…ん、あまり覚えてないけど不思議と懐かしい。」
 俺たちは新婚旅行として、レニの故郷ドイツへ来ていた。
「…ここがレニの生まれた国かぁ…。」
「どうしたの?急に改まって…。」
「だってここは俺のもう一つの故郷じゃないか。」
「…どうして?」
 レニは首をかしげた。
「俺のお嫁さんの故郷は、俺にとっても故郷なんだよ。」
「…それじゃあ、ボクのもう一つの故郷は日本?」
「もちろんさ!」
 俺は笑顔で返した。
「…故郷かぁ…。なんか気持ちいいね。」
 レニは微笑んだ。
 レニは、初めて帝劇へ来た時とは比べものにならないほど感情豊かになっている。
 誰が想像できただろうか。
 いや、俺はレニが必ず笑ってくれると信じていた。
 そして今はレニが笑ってくれるようになったんだ。
 俺がこれから守っていかなくては……。
「隊長?どうしたの?」
 いつの間にか真剣な表情になっていたようだ。
「いや、何でもないよ。ただ、レニが…。」
「…ボクが?」
「あ、あぁおなかすいたなぁ。何か食べようか。」
「そうだね。」
 俺たちは街へ歩き出した。

「何を食べるの?」
「うーん…、パンのいい匂いがする…。パンを食べよう!」
「うん!」
 パン屋に入ると、そこにはたくさんの種類のパンが並んでいた。
「たくさんあるんだなぁ。」
 いくつか注文して早めの昼食をとった。
「このパンおいしい!」
「…ドイツ語でパンはBrot。この8字型はBrezl、こっちの編み髪型はZopfbrot、そしてこれがLaugenbretzel。」
「そ、そうなんだ。」
「ドイツのパンは種類によって名称が異なるんだ。」
 さすがは博学のレニである。
「それにここはマイスターが作ってるから、おいしいのは当然だ。」
「へぇ…。…でも硬くてパサパサしてないかい?」
「それは欧米人と亜細亜人の好みの違いだよ。」
「…なるほど。」
 少々カルチャーショックを受けながらも楽しい時間が過ごせた。

 観光名所としては、ベルリンのブランデンブルク門やミュンヘンのニュンフェンブルク宮殿など、数多くの場所へ行った。
 レニにまた一歩近づけたような気がした。

 そして俺たちの新婚旅行は終了した。
 とても充実した日々だった。
 ドイツ、遠いけれど俺にはとても近い国…。

 ここは日本。
 俺とレニは今、一つ屋根の下、二人で一緒に暮らしている。
「新婚旅行楽しかったね。」
「うん…。」
 レニは少し顔を赤らめた。
「…幸せって…いいなぁ。」
「何?いきなり。」
「レニ、そこに座って!正座で!」
「?…わかった。」
 不思議そうな顔をしながらレニは言われたとおり座った。
 そして俺はレニの膝に頭を置いて寝転がった。
「た、隊長!?何?いきなり!」
 レニは真っ赤になって慌てている。
「何って、膝枕だよ。これが一番落ち着くなぁ。」
 膝枕は心の故郷だ。
「隊長…。」
「レニ、もう俺たちは夫婦なんだ。そろそろ『隊長』はないだろう?」
「……一郎さん。」
 レニは少し戸惑ったが俯いてそう呼んだ。
 そのまま俺は眠ってしまったらしい。
 だから、寝ている俺にレニがキスをしてくれたなんて知るよしもなかった。
 …あ、本場のバウムクーヘン食べ損なった…。




 あとがき
5000hit
緋月七海さんに捧げます!「新婚旅行・膝枕」でSS

ちょっと重い(?)内容もありますがあしからず。
パンのことは、ドイツの数少ない私の知識です;;
新婚って難しいですね(汗)
てか太正時代のドイツってどんなんでしょう?;;
「故郷」は「ふるさと」と読んで下さい。
そして重要な膝枕…、唐突でスミマセンorz

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ