「picnic」



 やっと春の公演も終わり一段落がついた。
 花組に、早めの春休みがやって来た。

「(春休みか…、久しぶりに外に出てみたいなぁ…。)」
 モギリ兼支配人の大神一郎は最後の仕事を片付けながら考えていた。
「そうだ、レニを誘ってみよう。」
「ボクがどうかした?」
 レニが大神のためにお茶を運んできた。
「ちょうどいいところに。レニ、少し…いいかな?」
「何?」
 大神は早速話を切り出した。
「この休みに外に出ないかい?」
「外?」
「ああ、旅行だよ。」
「旅行!?二人だけで?」
 レニは少し戸惑っているようだ。
「え…、いや、ピクニックだよ。」
「…二人だけで?」
「だめかい?」
「…いいよ。」
 少し考えてからレニは答えた。
「でもどこへ行くの?」
「それは行ってからのお楽しみさ。」

 レニと別れた後、大神は一人嘆いていた。
「ピ、ピクニックって…どこがいいんだ?」
「桜が咲いているから花見でもしてきたら?」
 振り向くとそこにかえでがいた。
 どうやらかえでが支配人室に入ってきたことに大神は気づかなかったようだ。
「あ、でも昼食はどうしよう…。」
「それなら私にまかせて!レニに言っておくわ。」
「え?」
「お楽しみよ、お楽しみ!」
 かえでは微笑んだ。
「はぁ…。」

 ピクニック当日、出発の時刻が近づいてきたがレニの姿がない。
「(どうしたんだろう…。)」
 すると足音が段々近づいてきた。
 走っているようだ。
「ごめん、隊長。ちょっと遅れちゃって…。」
「どうかしたのかい?」
「ううん、何でもないよ。」
「そう、それじゃあ行こうか。」
「うん!」
 二人は出発した。

 二人は早速地下鉄に乗り込んだ。
「隊長、どこへ行くの?」
「俺もよくは知らない。でも綺麗なところだよ。」
 そんな他愛もない話をしているうちに地下鉄は目的の駅に着いた。
「結構遠いんだね。」
「そうだな…。」
 駅からしばらく歩いていくと目的地に着いた。
「ここだよ。」
「わぁ……。」
 そこには辺り一面満開の桜があった。
「今は花見の季節だからね。気に入ったかい?」
「うん!すごい……。でも何だか人は少ないね。」
 レニの言うとおり普段なら観光客でいっぱいのはずが、今日は少なかった。
「…そういえばもうお昼だ。レニは何が食べたい?」
 大神はレニ訊ねた。
「あの…隊長?」
「ん?何だい?」
「ボク、お弁当作ってきたんだ。」
「えっ?」
 レニは鞄から弁当箱を二つ取り出した。
「食べてくれる?」
「もちろんだよ!」
 レニが弁当を作ったのは、もちろんかえでの作戦である。
 今朝出発に遅れたのも弁当を作っていたからだ。
 大神はすぐにレニの手作り弁当を食べた。
「うん、うまい!!」
「ほ、本当に?」
「ああ、すごくおいしいよ!」
 言葉が自然に出てくるほど美味しかった。
「満開の桜にレニの手作り弁当は最高だよ!」
「隊長…。」
 レニの顔が真っ赤になった。

 食事を済ませてから、大神とレニは桜並木を歩いていた。
「隊長、何だか雲行きが怪しいね。」
「そうだな…。」
 太陽が黒い雲に覆われ、あたりは暗くなっていた。
 すると突然雨が降り出した。
「隊長、この雨はすぐに止みそうにない。」
「どこかで雨宿りしよう。」
 二人は近くの屋根があるところを見つけ、そこへ避難した。
「もしかして、今日は雨が降るから人が少なかったのかな?」
「…ごめん。俺がちゃんと天気を調べていれば…。」
「そんなこと…。あ、隊長、ここ「お茶」ってかいてあるよ。」
 偶然二人は店の入り口に立っていたようだ。
「入ろうか。」
「そうだね。」
 二人は店に入っていった。

 温かい日本茶を注文し、しばらくくつろいでいたが、いっこうに雨の止む気配はない。
「これからどうするの?」
 帰宅時間を不安に思ったレニが訊いた。
「うーん…、傘を一本譲ってもらうしかないな。」

 心優しい店主に傘を譲ってもらい、大神とレニは雨の中駅へ急いだ。
「レニ、寒くはないかい?」
「大丈夫だよ、隊長が側にいるから…。」
 しばらく歩いていると駅が見えてきた。
 地下鉄に乗り、座席についた。
「(途中で雨が降るとは…、せっかくのピクニックが台無しだ。ちゃんと天気を調べていれば…。)」
 そう後悔に駆られていた大神の肩に何かが触れた。
 レニの頭だ。
 どうやら座席についてすぐに眠ってしまったらしい。
 レニの髪や服は少し雨で濡れていたが、幸せそうな表情だ。
「(…来年もまた来よう。)」
 そうして二人は帰路についた。





 あとがき
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天川 零さんに捧げます。
「お茶・大神・レニ(+癒し・二人旅)」でSS
勝手に挿絵付き(笑)

ツッコミ禁止です(爆)

何月か分からない上に帝都の地理に詳しくないとは…;;
そしてピクニックなのか花見なのかデートなのか…。
でも花見って a picnic under the cherry blossoms だからね(笑)
そんでもって、店の入り口に―って、何てはた迷惑な…。
あぁ、もちろん「相々傘」ってやつです。
むしろ「愛々傘」ですか?(笑)

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