ショート!

□沁みてゆく
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見送る朝に、泣いてしまった。しかも銀時の目の前で、だ。
笑顔で見送ると約束したのに、これじゃあ行くなと言ってるようなものだ。そう思っても目から出るしょっぱい水は止まってくれなかった。


「泣くなって、いつもみたいに笑顔で見送ってくれや」


銀時はクシャッと困ったように笑って、嗚咽する私の頬を着物の袖でゴシゴシと拭っていく。同時に硬いものがぶつかりあう冷たい音がして、銀時はもう帰ってこないんじゃないか、そんな気分になった。

そして、銀時は名残惜しむかのように私の頬に触れている。その手が優しくて暖かくて、また涙があふれ出す。心地よくて目を閉じた。



貴方に会えたことが愛しくて、悲しい。会わなければ、こんなみっともなく泣くことも、銀時を愛しく思うこともなかっただろう。二つの感情はなかでぐるぐると渦巻いていて、私は気がおかしくなってしまうかもしれない。





込み上げてくる涙はとどまることを知らず流れ続け、また銀時の袖に染み込んだ。












沁みてゆく
(それは私の思いを吸込むように、)




20070209
 

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