TOS小説
□鮮血の笑顔
「―――――ジーニアス!」
その声は幻聴か、はたまた現実に発せられている音なのか。
既にその区別さえつけられなくなっていた。
耳が使えないから、一生懸命瞳を開く。
はっきりとした姿は、もう判別することは不可能。
ただ、近くでキミが何かをしきりに叫んでいるのは解った気がした。
この景色が、本物か、幻か。
それは解らない。けれど、そんなことはもうどうだっていい。
全身の力を集中させて動かした己の手が触れたものが、たとえ想像力の生み出した幻の感触だったとしても
聞こえた声が、自分の望みが強すぎるがために生まれた幻の音だったとしても
それはそれで、今は『幸せ』と言えるから。
苦しくても、笑顔になれるから。
だって、そうでしょ?
「 」
一番最後に聞けた声が、触れた頬が
「 」
一番大好きな、キミのものだったんだから―――――
― END ―
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