TOS小説

□モノクロノオモイデ









・・・いつからだろう。

自分の感情を、表に出さなくなったのは。


ハーフエルフだから。その理由一つで迫害され、疎まれ、差別された。
穢らわしいものを見る目で脅されて、何処へ行っても邪魔者扱い。


     お前たちが生きていることに、意味などない


・・・そんな言葉、とうの昔に聞き飽きた。



ハーフエルフだから。混血だから。純血じゃないから。
差別するのが当たり前。
疎むことなど普通。

そういう思考の持ち主が、『人間』っていう生き物だと思ってた。






魔術が使えるし、何より人間とは少し違うエルフ特有の顔立ち。
それをそのまま活かして、村では『エルフ』と偽って生活していた。
ただ唯一の欠点、ハーフエルフ独特の特徴。
人間とエルフの狭間の者に稀に見られる、エルフとは違う、丸型の耳。
尖っていない、人間と同じであるその耳を隠すため、髪を伸ばしていた。
ちゃんと隠れているかが気になって、髪を触るのが癖になってしまったくらい。


それでも、ちゃんとエルフになりきれていたとはいえ、やはり人間とは違う生き物。
迫害こそされなかったものの、周囲の目はいつもどこか冷たかった。






・・・たった一人、のちに親友となる、彼を除いては・・・。








森で瀕死だったところを拾われて、ドワーフに育てられた『変わり者』。
けれど、村の人々には好かれていた。
でも、自分にとってはどうでもいいこと。
どうせそんな奴でも、他の人間と一緒に決まっている。
まだ幼いながらも冷めた感情しか持っていなかった自分は、大して気にも留めなかった。


でも、向こうは違った。


エルフを物珍しく思ったのか、それとも誰とも話さない自分を不憫に思ったのか。
何を考えての行動だったのかは分からないけど、突然彼は自分に話しかけてきた。
他のみんなと同じように、温かい笑顔を向けて。
けれど自分にはそんな相手の行動も、「人間だから」という理由だけで疑わしく見えた。






それが誤解だと気づくのに、そう時間はかからなかった。






のちに彼の友だちである少女とも親しくなり、彼らと過ごしていく中でたくさんのことを学んだ。
それは学術的なものではなく、普通は誰もが成長する過程で学ぶ道徳的なもの。
それでも、彼らと出会わなければ絶対に学ぶことのできなかった、大切なもの。


親友と呼べる存在のこと。
物事を楽しむ心。
自然とこぼれでる笑顔。
人を信じる気持ち。
そして・・・

















人を、愛する気持ち。
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