TOS小説

□モノクロノオモイデ






ぽろぽろ  ぽろぽろ

頬を伝う、冷たい雫



ぽろぽろ  ぽろぽろ

止まらない、感情の荒波










悲しいわけじゃない。
怒っているからでもない。
でも、嬉しいわけじゃない。

寧ろ、それらの真逆。



言葉にできない感情が、止まることを知らない雫となって滴り落ちる。
治まらないのは知っているから、拭うことさえしない。
そんな自分の姿を、まるで他人のように己の心が見据えている。





理性では解っている。
無意味、無感情の涙は、目の前の相手を混乱させる。
でも、全く感情が無いとは思わない。
思わないけど、実際目の前でキミは驚いている。


当然といえば、当然。
本来の自分なら容易に想像ができた、相手の光景。


けれど、今はそこまで思考が回らない。
伝えたい『想い』と、伝えてはいけないという『思い』。
同時に存在する矛盾した己の思考に、自分自身が一番困惑している。
その困惑が、止まらぬ雫となって溢れ出たのだ。







我ながら馬鹿げた話だと思った。
自分自身の感情も整理できないとは。
今までの自分なら考えられない。
何故なら、感情の整理は己が本来最も得意としていたことだからだ。
そうでなければ、自分がこの世界で生きていけなかったから・・・。
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