TOS小説

□星空を映す水面のように






いつも見ていた。
気づけばキミを目で追っていた。
許されたから、いつもキミの側にいた。
そして側でまた、キミを見てた。


















世界再生の旅の途中。
テセアラのみんなとも出会って、みんなで旅を続けていて。
今はその旅の途中。


小さな森に入った一行。
日も暮れてきたので、ひとまず今夜はここで野営をすることになった。
今日の夕食当番はジーニアス。
何人かの仲間が手伝ってくれたため早めに夕食の準備をすることができた。




夕食も済み、各自思い思いの行動をとり始めた。
食事のかたずけを済ませたジーニアスは、野営地の近くを流れる小川の方へと歩みを進めた。
特に理由はなかったが、なんとなく懐かしい感じがして、引き寄せられるように足を動かした。

懐かしさを感じた理由、それは小川の側に膝をついて己の顔を水面に映した時、やっとわかった。
・・・似てるんだ。
昔よく見ていた、あの家の近くを流れる澄み切った水の通り道に。
イセリアにいたころは、よく遊びに行ったあの家。










自分が、最も大切に想う人の、家。















その頃は、よくコレットも入れた三人で、あの家の近くで遊んでいた。
近くを流れる小川で水遊びをしたこともあったっけ。
それから・・・夜は三人で星を見ていたこともあった。

夜空に漂う、けれど確かにそこにある星を、ただずっと見つめていて。


時々、水面に映った星を見ていたこともあった。
澄み切った水に映っている星は、流れに逆らい続け、いつまでもそこに映され続ける。
掴もうと手を伸ばしても、掬おうとしても、手を伝わるのは夜の水の冷たさだけ。
近くにあるように感じるのに、実際は遠く、儚いもの。
決して手に入れることのできない、誰かのものになったりはしない、純粋な煌き。
確かにそこにあるのに、どんなに手を伸ばしても届かないところにある、その存在。

ジーニアスにはそれが、なんだかとても自分の心境に近いように感じられた。
だからこそ、そんな夜の水の流れは好きだったけれど、同時に見たくないという拒否感もあった。



我ながら矛盾した考えだとは思う。
嫌いではない。むしろ好き。
けれど見たくはない。視界に入れたくない。
それはまるで、自分の想いを否定し、近づけたくないとでも言うように。
それでも、久しぶりにみた水の流れは、相変わらず澄み切っていて。
流れに逆らい続ける星も、そこにはあった。


ふと気づくと、ジーニアスはまた昔のように、水面に映る星に手を伸ばしていた。
それを静かに掬い上げる。
手に残るのは、冷たく流れ落ちる水の感触だけ。
手に入れることなど、やはりできなかった。
当たり前といえば当たり前。掬うことなどできはしない。
それでも、無意識のうちに手を伸ばしていた自分は、それほどまでに求めていることになる。
星をではなく、気づくといつも視界に入れている、あの純粋な笑顔の持ち主を。
幼い頃から見続けてきた、その相手を。


そこまで思考が回ると、慌てて小さく首を横に振った。
まるで自分の想いを取り払うかのように。

求めすぎてはいけない。
自分を認めてくれて、ハーフエルフであることを知っても尚『親友』と言ってくれて。
それ以上を望むほど、自分は欲張りな奴ではないと思っていた。
それなのに・・・
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