玩ばれる人形
□33.
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「みんなー!!!今日から仕事の受注を再開するわよー。
仮説の受付カウンターだけどガンガン仕事やろーね!!!」
「うおぉおおぉっ!!!!」
「仕事だ仕事――!!!」
ミラの明るく元気な声の後に次々と湧き上がるのは野太い男達の声。
「何アレェ、普段はお酒吞んでダラダラしてるだけなのにィ」
「あはは」
ルーシィの言う通り、いつもはただギルドで飲んだくれている彼らだが久しぶりに仕事が出来るのが嬉しいのか、リクエストボートに嬉嬉と群がっている。
「そういや、ロキいないのかなぁ」
「とうとう惚れたか…」
「あーぁ…ルーシィもとうとうロキの魔手にかかっちゃったのね」
「違います!!」
ぼそっと呟いた牙狼にのったミラの言葉に素早く否定するルーシィ。
彼の傍にいるシオンはそんな彼らに苦笑するように目を細めた。
「ロキに、何か用だったの?」
「ん?あぁ…なんか鍵、見つけてくれたみたいで…一言お礼したいな…って」
「会ったら逃げられるけどな」
「うっ」
「うん…見掛けたら伝えとくわ。
それより星霊に怒られなかった?鍵落としちゃって」
「はは…そりゃあ…もう…怒られるなんて騒ぎじゃなかったデスヨ…」
「そういや、ルーシィのは俺達と違って、呼び出す時も鍵が必要だったな」
「ホント、シオン達のがちょっと羨ましい…」
うぅ、思い出しただけでお尻が痛く…と嘆くルーシィに追い打ちを掛けるように2人と1匹。
「冷やしてやろうか?」
「さり気無いセクハラよ、それ」
「ルーシィ赤いお尻見せてー」
「堂々としたセクハラよそれ!!」
「もっとヒリヒリさせたらどんな顔すっかな、ルーシィ」
「鬼かお前は!!!」
昨日のトラウマに続き、彼らから精神的攻撃を受けたルーシィは隣に座るシオンに泣き付く。
そんな彼女の頭をよしよしとシオンは優しく撫でる。
すると然テーブルが飛んできて、ナツに直撃した。
「もう一ぺん言ってみろ!!!」
テーブルが飛んできた方向からエルザの怒鳴り声が聞こえて来た。
「エルザ?」
何だ何だと周りがざわざわと騒ぎ、エルザを注目する中、彼女は鋭く目の前の人物を睨みつけていた。
「この際だ、ハッキリ言ってやるよ。弱ェ奴はこのギルドに必要ねェ」
その人物は、妖精の尻尾のS級魔導士の一人…―ラクサス。
「貴様…」
「ファントム如きに嘗められやがって…恥ずかしくて外も歩けねーよ」
するとラクサスはまだ怪我が完治していないレビィ達を指差す。
「オメーだよ、オメー。
元はと言えァ、オメ―等がガジルにやられたんだって?つーかオメー等名前知らねぇや、誰だよ?情けねぇなァ、オイイ」
嘲笑うラクサスにレビィ達は反論出来ず、ぐっと悔しそうに押し黙るしかない。
「酷い事を…!」
仲間を、友達を悪く言われて怒りを覚えないはずがない。
キッと自分を睨むルーシィに気付き、ラクサスは彼女へ視線を向ける。
「これはこれは更に元凶のねーちゃんじゃねーか」
「ラクサス!!!」
ミラはばんっとカウンターを叩き、ラクサスを諭す。
「もう全部終わったのよ。誰の所為とかそういう話だって初めからないの。
戦闘に参加しなかったラクサスにもお咎めなし、マスターはそう言ってるのよ」
「そりゃそうだろ、俺には関係ねぇ事だ。
ま…俺がいたらこんな不様な目には合わなかったがな」
その言葉にエルザの怒りが頂点にまで達した。
だが、エルザが飛び出すよりも早く、ナツがラクサスに飛び掛かる。
ナツはラクサスに拳を振るうが、雷と化したラクサスの前には届かない。
「ラクサス!!俺と勝負しろォ!!!この薄情モンがァ!!!」
「あはははっ、俺を捉えられねぇ奴が何の勝負になる」
「てめぇ…!!」
今にも拳に炎を燈そうとするナツに埒が明かないと察したシオンは彼の手をぐっと引く。
「うわっ!?何すんだ、シオン!」
「…此処で喧嘩したら、周りに被害がでる」
そう、周りには火に燃えやすい木材があるのだ。
それにまだギルドは修復途中。喧嘩で壊されてしまったら堪ったもんじゃない。
「…よぉ、シオン」
「……」
ナツの傍に来た事でラクサスの視線がシオンへ向いた。
「確か、テメェもファントムにやられたんだってなぁ?」
「…言い訳はしないよ」
油断はしたとはいえ、ファントムにやられたのは事実だ。
「でも良い事もあったようじゃねぇか」
「?」
「妖、増えたんだって?」
「…まぁね」
「よかったなァ、“道具”がまた増えて」
瞬間、蹴りが放たれる。
「―…っと、危ねぇ危ねぇ」
ラクサスは先程のナツの拳と同じようにシオンの蹴りを避けた。
「そういやぁ、妖の事はお前の地雷だったな」
「…もう一回言ったら、次は本気で当てる」
「はっ、出来るならな」
自分を鋭く睨み付ける隻眼にラクサスは鼻で笑うと、此処にいる全員を嘲るように笑った。
「俺がギルドを継いだら弱ェモンは全て削除する!!!そして、歯向かう奴も全てだ!!!
最強のギルドを創る!!誰にも嘗められねぇ、史上最強のギルドだっ!!!」
はははははッと高らかに笑い、ラクサスは立ち去った。