玩ばれる人形

□26.
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全員が寝静まった真夜中

何かを感じ取り、シオンと牙狼は目を覚ました。


「……」

「…同じだな」


その言葉にシオンはコクリと頷く。


(移動、しているな…)

「どうする?」

「……」

部屋を見渡すとぐっすり眠っている皆。

こんな不確かな事で皆を起こすのは忍びない。
そう思い、シオンはジャケットを手に取ると静かに立ち上がる。


「…行こう」


そして、黒と白銀は闇に溶けて 消えた。





††









―トッ



久々に羽織った黒のジャケット風に靡かせながら、白銀と共に屋根を駈ける。

どうやら気配は街の外れにある森へ向かっているようだ。


「…何者なんだろうな」

「…さぁ」


トンッと木の枝や落ち葉が彼方此方に落ちている地面に着地する。

辺りを見渡しても森は静かだ。



――いや、静か過ぎる。






「…誰」


低く、そう闇へと尋ねる。

するとギヒ、と変わった笑い声を響かせながら闇の中から一人の男が出て来た。


「よく俺に気が付いたなー」

「…夜は私(“黒竜”)の縄張りだ」


シオンは闇の滅竜魔導士だ。
闇の中にある不穏な気配などすぐに察知する事ができる。悪意を持った者は特にだ…

それは牙狼も然り。
彼は人一倍気配に敏感だ。
ギルドに残されていた気配を覚えていた為、彼の気配を感じ取る事で出来た。



「お前は、誰」

「俺は“幽鬼の支配者”のガジルだ」


まさかの彼は、ギルド破壊の主犯にして、自分と同じ滅竜魔導士。

シオンはゆっくり臨戦態勢に構えながら、鋭く目を細める。



「…ギルドを…あんな風にしたのは、お前?」

「そうだ」

「……今度は何の用?」


そう尋ねれば、彼はギヒと怪しく笑った。


「もう一つプレゼントを置いてきただけだ」

「……プレゼント…?」


ガジルの言葉の意味が分からず、眉を寄せる。


「にしても妖精の尻尾は話にならねぇーな。


――あんなすぐに終わっちまう程弱ぇとはよぉ」


『!』

「まさか…お前…!!」


馬鹿にしたような笑みを浮かべたガジルの言葉に、1人と1匹は気付く。
そして牙狼は低く唸りながら牙を剥いた。

だがガジルはニィと笑うだけ。


「それがどうしたぁ?」

「…っ…!」


怒りでシオン達の顔が歪む。

するとシオンはガジルから目を離さず、牙狼に言った。


「…牙狼、行って」

「!シオン…!!」

「いいから、早く」

「だがっ」

「牙狼!」

「……っ分かった…」


ギリッと歯を食い縛って牙狼はシオン達に背を向け、この場から走り去って行った。


「…すんなり、行かせてくれたね…」

「ギヒヒ、お前とはサシで戦ってみたかったんだよ。同じ滅竜魔導士としてな」

「……」

「竜と竜の戦いと行こうぜ“闇華”」
















――刹那、二人の竜が同時に魔力を放出した。



 
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