玩ばれる人形

□19.
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ナツ達がS級クエストの為、悪魔の島と呼ばれたガルナ島に行って、1日が経った。


―妖精の尻尾のギルドがあるマグノリアから少し離れた、郊外。

整えられた数本の木々と花壇に囲まれた一軒の家に、シオンと牙狼はいた。


ラクサスから本を貰った日からギルドに行かず、ずっと家で本棚の整理をしていたシオン達はナツ達がS級クエストへ行ったと知らない。

…その為、突然家に来たエルザが何故般若を背負っているのか、知る由もない。











「…エル、ザ?」

「どうしたんだ、そんな顔して」


「…………シオン」


「うん?」


そう静かに自分の名を呼んだエルザにシオンが首を傾げた瞬間、


―ガッ!!


「今すぐギルドの掟を破った奴等を仕置きしに行くぞ!!」

「え、え?ちょっエル――〜ッ!!!」


鬼の形相でエルザはシオンの腕を掴むと、ギュンッと物凄い速さで走り出した。


「シオン!?…チッ、おいエルザ!!」


一気に小さくなっていく2人の背中に牙狼は驚きの声を上げたが、止まる気配のない事に舌打ちを零すと(ちゃんと戸締りをして)エルザ達を追いかけて行った。







††



















































































「……」

「……」



ザザァ…ザザァン…



漆黒の夜に浮かぶ、月に照らされた藍色の海



「ぐ…ぅ…」

「あの、女…っ」



………波の音と共に聞こえるのは、床に倒れる男達の呻き声。

そして、夜の海に浮かんでいるのは、一隻の海賊船。



「あ…あんな島に、何しに行くつもりでぇ」

「いいから舵を取れ」

「ひっ」


その海賊船の甲板から聞こえてくるのは船長らしき男と、エルザの声。


―…何故、今彼女達が海賊船を乗っ取って…ゴホンッ、乗せて貰っているかというと話は早い。


シオン達を引き摺って、エルザが向かった場所はハルジオンの港。

そこでガルナ島へ乗せてって貰える船を探したのだが、皆悪魔の島に行きたくないと乗せて貰える船などなかった。

……そこでエルザが真っ先に目を付けたのは港の隅にあった海賊船。

エルザは1人でズカズカと海賊船へ乗っていき、ガルナ島へ乗せてくれと頼んだエルザだが、当然誰も知らない奴を乗せる訳がない。
すると船長がエルザの体をジロジロと見つめ、ニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべ、「体で払ってくれたらいいぜぇ?」と心もない事を言ったのだ。

流石のシオンも冷たい目で船長やそいつと同じくニヤニヤ笑いだした船員達を見たが、次の瞬間…































――エルザに全員ボコボコにされていた。

























「勘弁してくれよ…!ガルナ島は悪魔の島だ…!!
噂じゃ、人間が悪魔になっちまうって…」


「興味がないな」


完全に怯えきっている船長の言葉と、それを一蹴するエルザの声を聞きながらシオン達は遠い目で海を見つめる。


「…青いね」

「……あぁ」



………人はこれを“現実逃避”と言う…







 
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