玩ばれる人形
□16.
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ナツがハッピーでエリゴールを追いかけて行った事に気付いたエルザ達は急いで魔動四輪に乗り、本来は列車が通るレールを走っていた。
「これ…あたし達がレンタルした魔動四輪車じゃないじゃん!!!」
「鉄の森の周到さには頭が下がる。ご丁寧に破壊されてやがった」
「……、」
「…シオン、大丈夫?」
「んー…」
グレイ達がそう会話する中、恐らく血を流しすぎた所為か、ぐったりと牙狼を枕にするシオンにルーシィが心配そうに声を掛けた。
そんな質問にシオンは生返事で返すだけ。
「…弁償かぁ…」
するとルーシィはそんなシオンを心配そうに頭を撫でると溜息を吐くようにそう呟いた。
「ケッ…それで他の車、盗んでちゃせわないよね」
「借りただけよ!!!エルザが言うには」
その言葉に口を開いたのはシオンの治療のおかげもあり、先程目を覚ましたばかりのカゲヤマ。
彼は意味が分からないと言いたげに口を開いた。
「…な…何故僕をつれてく…?」
「しょうがないじゃない、町に誰も人がいないんだから。
クローバーのお医者さんに連れてってあげるって言ってんのよ。感謝しなさいよ」
「違う!!!何で助ける!!敵だぞ!!!
…そうか…分かったぞ。僕を人質にエリゴールさんと交渉しようと……無駄だよ。あの人は冷血そのものさ、僕なんかの…」
「うわー、暗ーい」
ぶつぶつと暗い事を呟きだしたカゲヤマにルーシィはそう言った。
その横ではカゲヤマの言葉に牙狼が青筋を立てていた。
「死にてぇなら殺してやろうか?」
「ちょっとグレイ!!」
「生き死にだけが決着の全てじゃねぇだろ?
もう少し前を向いて生きろよ、お前等全員さ…」
そのグレイの言葉にカゲヤマは黙り込む。
が、その時
ガタンッ
「きゃあ!!」
魔動四輪に大きな衝撃が襲い、ルーシィの体は前の方へ…正しくはルーシィのお尻がカゲヤマの方へ飛ばされた。
シオンの方は牙狼が押さえた為に無事だ。
「エルザ!!」
「すまない、大丈夫だ」
グレイの呼びかけにエルザはそう返し、四輪を動かすが魔力を消耗しすぎた所為か、息が荒い。
「でけぇケツしてんじゃねぇよ…」
「ひーっ!!!セクハラよ!!グレイ、こいつ殺して!!!」
「オイ…俺の名言、チャラにするんじゃねぇ」
「……お前等」
その時、今まで黙ってルーシィ達の会話を聞いていた牙狼がやっと口を開いた。
だが、その口から出たのは怒りが込もった低い声。
「目の前で殺すだ、殺せだ…」
その声にエルザとシオン以外の誰もが肩をビクリと揺らす。
「シオンの血を無駄にするような事言ってんじゃねぇ!!」
「そっちー!?」
「当たり前だ」
ルーシィのツッコミに牙狼はそう言って、フンッと鼻で笑った。
「そこのカゲだがハゲだか知らんが死にたいなら勝手に死ね。お前の命なんぞ、これっぽっちも興味がない」
「牙狼、あんたね…」
「…だが、死ぬ前に」
「?」
「シオンがお前に流した血の分だけ、自分の血を抜いてから死ね」
「「「……」」」
牙狼の言葉に思わずルーシィ達は沈黙する。
「……お前、犬の癖にえぐいな」
「犬じゃねぇ狼だ。その口を噛み千切るぞ」
「……お前、何かコイツに俺達より厳しいな」
「コイツがシオンの血を無駄にしようとしてたからな」
「…本当、牙狼ってシオン大好きねー」
その言葉に牙狼は再び鼻で笑うだけで、ふいっと視線を彼等から逸らすとぼーっとしているシオンの頭に擦り寄った。