玩ばれる人形

□05.
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「…ぅ、」


ズキリと体中に響く痛みに眉を寄せた直後、シオンはゆっくりと目を開いた。

一番最初に見えたのは、見た事ない天井。


「…此処、は」


首を動かし、周りを見渡すとやはり見た事ない部屋。
自分は、白いシーツが敷かれたベットに寝かされていた。


「っ!」


一瞬で知らない所だと理解したシオンはガバッと起き上がった。
瞬間、彼女の体に広がる痛み。


「ぐ、ぅ…!」


頭と肩に感じる痛みにそこを押さえると、布の感触。


「…?」


そして、視界に入った腕は綺麗に包帯が巻かれていた。
それは、一番怪我が深い左肩や頭にも巻かれている。幸いにも左目にも。
更に気づけば、今までシオンが着ていたボロボロの服は綺麗なワンピースに変わっていた。


「…大丈夫か?」

「!牙、狼…」


今の状態に困惑していると、牙狼がベットの下から顔を覗かせた。
自分の相棒を見て、シオンは安堵の息を吐いたが、すぐに何かに気づき、慌てて周りを再び見渡す。


「あれなら此処にあるぞ」

「ぁ…」


牙狼が指したのは、ベットの傍に備え付けられているサイドテーブル。
そこの上にちょこんっとラオに託された小箱が置かれていた。


「中は無事だぞ」

「……よかった」


慌ててそれを手に取り、中身を確認するシオンに牙狼はそう言った。
牙狼の言葉と中身を見て、彼女は再び安堵の息を吐いた。


「……牙狼…此処は?」

「此処は妖精の尻尾(フェアリーテイル)、

魔導士ギルドの1つだ」

「…魔導士、ギルド…」


その言葉には聞き覚えがあった。

ラオが時々話してくれたのだ。
この森の外には、たくさんの魔導士ギルドという物があると、



「…此処が、魔導士…ギルド」


そう呟いて、手元にある小箱をぎゅっと握る力を強めた。

その時―







キイィィ…




『!』


突然、ゆっくりと開かれたドア。
ドアの開く音に1人と1匹は思わずそこへ視線を向けた。

そこには、赤髪の少女がいた


バチッ

まさにそんな効果音が付きそうな程、目が合った2人と1匹。


『……』


少女はシオンを見て、目を丸くした。
瞬間、



「め、めめ目を覚ましたぞぉ!!!」



少女はそう叫びながらドタバタ!とドアを閉めて、走り去っていった。


「…何なんだ」

「……」


1人と1匹は突然の少女の行動に呆然としていると、聞こえてくる音。
それは、だんだんと大きくなっていく…




バンッ!!






「目を覚ましたって本当かあぁぁ!?」





ドアが開く大きな音と共に、一番に見えたのは桜色だった。





 
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