玩ばれる人形

□03.
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高杉紫苑―いや、シオンと牙狼名付けられた小さな狼がラオに拾われてから早十数日が経った。

その間には、シオンはラオに半ば無理矢理に弟子にさせられたり、牙狼が話せる事が分かったりと…たくさんの事が発覚した。
ちなみにシオンがラオから妖遣いと変換魔法(マテリアルパズル)を教えてもらっている所である。



―妖遣いとは、
妖と血の契約を交わし、使用する魔法。

―そして、変換魔法とは、
物質を自由自在に変換させる魔法。


2つともラオが使用する魔法だが、ラオが契約している妖は今までに見た事がない。






「……」


ラオとシオン、牙狼が住んでいる木造の家のある一部屋。

そこでシオンは本を読んでいた。そんな彼女の隣には当たり前のように牙狼が寝そべっている。
彼女の周りを囲むように大量の本が並べてある本棚があるのでシオンが呼んでいる本はその中の1つなのだろう。

その本を見ると、何処かの理科の教科書に出てきそうな空気の構造や水の構成が書いてある。何故、そんな本をシオンが読んでいるかというとラオの魔法指導の1つだからだ。

―変換魔法の使用条件は“理解”。

だからこそ、ラオはこのような本を沢山彼女に読ませている。
…その所為でシオンは暇さえあれば、読むという癖が付いてしまったが、

その師であるラオの姿がない静かな空間にはシオンと牙狼の1人と1匹だけ。
恐らく、ラオは何処かに出掛けているようだ。




「……あ」

「? どうした?」


ふいに小さく零れた声に牙狼はシオンへ顔を見上げる。


「水…」

「あぁ、そういえば少なくなってきたな」

「ラオに頼まれたんだ…」

「…行くか」

「うん」


今読んでいるページに先程変換魔法で作った栞を挟んでから本を置き、座っていた椅子から降りる。
その時丁度、牙狼が咥えて持って来た全身を包む大きさのローブのような布を装着し、水がめの近くに置いてあった桶を手に取り、ドアから外へ出た。























    ・・
それが、彼らとの出会いになるとは知らず…





 
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