いただきもの

□てくにか。兎亀様から頂きました
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今密かに盛り上がっている神話パロです。鎧を纏ったトリコが、格好良すぎる…つくしい背景まで有難うございます
この素晴らしい神話小説の続きは兎亀様サイトで後続予定です(小説はパソコンからご覧になれます)
てくにか。




月と太陽(仮題)


世は動乱の時代。
国と国が力を求め、人命を擲って戦争を続けていた。
領土と、名声を勝ち取るために、戦士たちは自ら戦地へ赴いて、その剣を振りかざし戦った。
終わらぬ戦いの日々は、しかし着実に終息に向かう。だがしかし、戦争の火種は常に誰かがばら蒔いて、戦士たちの熱き血を鎮める暇もない。


見上げる空に、夕陽とまだ青い空が混ざりあう頃合い。銀毛の馬に跨がり、広野を駆ける騎手の姿があった。
鎧を纏い、背中には剣を背負い、夕日の中に見事な蒼髪を靡かせ、馬を走らせる騎士の名は、トリコと言った。

「踏ん張れよテリー。あの丘の向こうまでだ」

トリコはテリーという名の銀馬の背中をぽんぽんと叩く。
戦地で善戦したのち、祖国に帰還する途路のトリコは、敵地では名の知れた戦士だ。名家の出身でもないトリコだが、その見事な長身と体躯をあますことなく奮い敵兵士を薙ぎ倒す様は、もはや知らぬ者はいない。
国王さえ認めるその実力を持ちながら、将軍の地位を与えると言われたこともあった。しかしそれをトリコは断った。
祖国と敵国の荒れた戦場に一人でやって来ては、劣勢であっても、まるで闇を照らす太陽のように勝機を切り開く。
祖国が信仰する太陽の神。その加護を受けていると称えられるほどに、トリコが出向く戦で負けたことはないのだ。
敵兵もまた、目の下の三本傷、珍しい蒼髪、その瞳に力強さを宿したトリコを一目見たら、忘れることはない。

「まだ国までは3日はかかるな。今日はここで休もう、テリー」

焼けた戦地を駆け抜け、国境まで馬であと数百キロといったところか。
もうすぐ日も暮れる。無理に険しい山を越えるのも危険だ。トリコは、窪んだ谷のようになっている渓谷の間で野営することに決めた。
さらさらと小さな沢が流れ、大きなナラの木が生えるそこは、テリーを休ませるには丁度よかった。
息を荒くしているテリーから降り、鞍を外してやる。
トリコもふうと息をつき、澄んだ水の流れる沢で水を飲む。

「.........」

ごくごく、と喉を鳴らして潤すトリコは、不意に眩しさを感じて目を細めた。
ゆっくりとその光源に目をやれば、トリコは思わず目を丸くした。
丘の向こうの空に、見たこともないほど巨大な月が浮かんでいた。
真っ白で、眩しささえ感じるほどの大きな月だ。
沢の清水がその輝きでキラキラと瞬く様はなんとも幻想的であった。
夜露を纏い始めた草木さえ、月の光に宝石を散りばめたように輝いている。

「とんでもねえとこに来ちまったなあ...」

しばらくその輝きに琥珀の瞳を釘付けにされていたが、不意に苦笑したトリコは、テリーを振り返って言った。

「これじゃあ眩しくて眠れねえかもしれねえな、テリー」

がしがし、と髪を掻きながら笑ったトリコは、まあいいかと呟いて、大きなナラの木の幹に体を預けた。



眩いほどに輝く満月は、いつまでもトリコを見つめるように夜空に浮かんでいる。
剣を肩にもたれたせ抱き締めたまま、トリコは仮眠をとっていた。
テリーは静かに草を食み、心地好い夜風が緩い谷になっているこの場所を吹き抜けてサワサワと草木を揺らす。
その風が不意にぴたりと止んだ。
一瞬静けさに包まれる中、テリーは草を食んでいた顔をあげ、異変に低い鼻息を立てる。
サクリサクリ、と静かな足音がトリコへと近付く。テリーは、警戒するように足を踏み鳴らす。
目を閉じたままのトリコを見下ろす視線。
ざあ、と夜風が一際強く吹き抜けていった。

「.........っ!」

トリコを見下ろす何者かが、ゆっくりとその手を伸ばしてきた。
その手がトリコに触れようとした瞬間、ジャリン!と音を立てて引き抜かれた剣が月明かりを一閃した。

「お前何者だ?俺に何か用か」
「.........」

トリコは相手の首もとに剣を翳す。
接近してきたことにはとっくに気づいてた。テリーが興奮気味に声を上げている。
しかし、トリコは自分を見つめる瞳の色に、警戒心がわずかに萎えたことに気づく。

「こんなところで寝ていては...野盗に寝首をかかれてしまうよ」
「...あ?」
「ボクは敵じゃない。剣を下ろしてくれないか」
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