一人娘と兄弟の物語
□ 四章
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夜が明け、弟は目を覚ましました。
眠ってしまったようです。
目を擦り立ち上がります。
すると目の前には、いつの間にか窓に現れたあの女の子が座って、此方をじっと見つめていました。
手を伸ばせば届きそうな程の距離。
弟は一気に頭が覚めました。
そして思い出したのです。
昨夜の出来事を…
涙が止まることを知らないように、どうしても泣き止みません。
目の前の彼女のことは、もうどうでも良くなっていました。
「泣か、ない…で?」
掠れながらも、綺麗な声が弟の顔を上げさせます。
彼女は立ち上がり、弟の頭を撫でようと手を伸ばしました。
背丈は兄と同じほどで、おそらく年齢も同じでしょう。
しかし、弟には兄の姿が彼女に重なって見えたようで、咄嗟にその手を払い除けてしまいました。
まるで撫でられる事に恐怖しているかの様です。
身の竦む小気味良い音が轟きました…
彼女は何も言う事無く、跳ね除けられた手を引っ込め、赤くなった所を撫でながら弟の泣き止むのをずっと待ち続けました。
弟は全てを理解しました。
何故彼女が此処に居るのか。
何故屋敷は果ててしまったのか…
元凶は兄と別れ際に会った、あの女の人と言う事も分かりました。