一人娘と兄弟の物語
□ 一章
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昔々。
由緒ある一族が暮らしていました。
彼等の住まう古城は、代々受け継がれるお城で
まるで王様のお城の様でした。
城の周りを木々に囲まれ、小高い丘の上でひっそりと暮らしています。
綺麗な花の咲き乱れる大きなガーデンに、手入れの行き届く城内…
訪れた者は、必ず惚けてしまう事でしょう。
そんなお城の中はとても豪勢で美しく、まるで王宮の様に華やかでありました。
沢山の人を雇い、溜息の出るほど羨ましい生活。
城の人達は皆笑顔でした。
そんな一族の一人娘、
名前を[Vermilion Rose]
12才の明るい少女です。
絵画の様に美しく、人形の様に可愛らしくもあり
名に違わぬ薔薇のような紅く長い髪は、まるで虜にするような凛としたものがありました。
誰からも慕われる彼女は、いわば一族の宝の様なもの…
両親や、雇われる者は大切に育てていました。
毎日が贅沢な暮らし振り。
彼女の部屋、はまるで城下の一軒家が丸々入ってしまう程の大きさ。
華麗なドレスを毎日着替え、人々が見惚れるような笑みで城を駆け回ります。
彼女の父親は公爵様。
若くして一族の頭首となり、王様の家臣の中で最も信頼されている御人です。
母親は公爵夫人。
美しく、淑やかで、彼女の自慢の母でした。
何時も屋敷に響くのは、優しさに包まれた笑い声。
皆が笑顔で困ることも、不快なことも起こることなく、まさに幸せな生活でした。
しかし何時からなのか…
彼女の屋敷には灯りさえ燈る事なく、不穏な空気だけが辺りを覆う様になっていました。
内装は寂れ、綺麗に磨かれた通路は黒く埃が積もり、
七色に輝くステンドグラスさえも悲しげに地面で光っていました。
窓ガラスも所々割られ、城内は荒れに荒らされていました…
人一人居ないお城では、烏の不吉な鳴き声があの頃の笑い声に変わって屋敷を包みます。
もはや見る影もありません…
彼女の一族が謎の失踪をして、早1ヶ月後。
城下のある区域に
「噂」が流れました。
「荒れ果てたあの屋敷の中には、たんまりと財宝が眠っているんだ」と。
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