不純な血
□ 一章
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くつくつと、
薄暗い部屋に声が響いた。
なんて不憫なのだろう、と。
時が経つにつれて、
徐々に彼女は解体されて行ってしまうのだと…
考えれば
笑わないでは居られなかった。
目の前で呻き声が上がる。
冷えてしまった手を差伸べ、
優しく頬を撫でてやった。
何かに遮られ、くぐもるすすり泣きが聞こえる。
−−−−−…
四方を壁に囲われた、まるで大きな箱の様な中に私は居た。
後手に扉があり、左右は壁。
正面にはカーテンが引かれ、露になった大きな窓に月明かりが注ぐ。
子供部屋であった。
だが無邪気な子供の様に
部屋には人形も、車の玩具も、蹴るボールさえ置かれてはいなかった…
其処に在るのは
子供の物とは思えないほどの大きな本棚が。
壁を見せまいと、肩を寄せ合う様に隙間なく並べられている。
収まっているのは、なんとも難しそうな書物や、本ばかりであった。
床には大量に本が散らばっている。
山になり、端の方に寄せられているものもあった。
足の踏み場すら無い中、
私はわざわざ本に埋もれていたベットを中心に引っ張り出して来て置いている。
本は追いやられ
久々に見せる絨毯が円形を表し
本はベットを一定の距離で囲っていた。
だが薄く埃の積る絨毯には…
真紅の血溜りがあった。
月明りが血溜り越しに光を屈折させ、私の顔を浮かび上がらせる。
反射し写りこむ私の顔は憔悴しきっていた。
眼の下が黒ずみ、
生気が見あたらない…
そんな眼を前髪は隠し、より陰鬱さを醸し出す。
整理のつかない心情が、
混沌としてそのまま顔に映し出されている様に想えた。
目を逸らす…。
「大丈夫… 恐れないで下さい。」
私は囁いた。
寝台に横たわる彼女には聞えていない様だ
悲痛なすすり泣きが
閑散として部屋に沁みる…