拍手編


□+晩餐会
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〜特別短編集〜

【晩餐会】



「さぁ、皆様。よくぞお集まり下さいました。」

少年は高らかに呼び掛ける


「我が晩餐会に出席頂き… 誠に嬉しく。」

口元に手を当て、クスクスと可愛らしく笑う。



少年は、長く大きなテーブルの端である特等席に座っていた。


テーブルの上には、豪勢な飾り付けが施されていて、必然と食事にも期待が出来る…




少年は腕を大きく広げ、誇らしげに語り始めた


「今回は皆様の為に、とっておきのモノを御用意させて頂きましたよ。」


まるで心酔しているかの様な語り口…

周りからは小さな歓声と、拍手が起こった。



「それで、若き公爵様。一体どの様なもので…!?」

丸く肥えた1人の男爵は、まるで子供の様に、興奮気味に身を乗り出して話し出した






公爵である少年は、それを見て少々がっかりしたのか…

「キルト男爵よ… 何時私が貴殿の発言を許した?」


先程の微笑みながら語る少年とは思えぬ豹変ぶり。



キルト男爵と呼ばれた男は、まるで石像の様に身体を硬直させた…


「そうよ! 何時公爵様が良いと言ったの!?」

すると、そんな沈黙の中金切り声にも近い怒声が響く。



その場に居る誰もが視線を送る先には

若き公爵のすぐ横に控えている、貴族の娘が居た。



少年と似た年の少女は、つかつかとキルト男爵の横に詰め寄り

「貴方、一体何様なのかしら?
公爵様がいらっしゃらなければ、貴方なんか…」


低く話す少女の右手は、きつく拳が握られわなわなと震えていた。



それを見た男爵は、ますます身体を固くさせる

「リアメルト、良い。下がれ」


少年は少女の名を溜息混じり呼び、簡潔な命令を下す。

「でも…」

「下がれ。」

少女は男爵を睨みつつも下唇を強く噛みしめ、渋々と公爵の横へと戻った…。



「こ、公爵様… どうか先程の失言、お許しに…!!」

石像の様に動かなかった男爵は、辛うじてそれだけを言い切る



公爵からの返答は無い…



周りを囲むように座る他の客人たちは、誰もが気まずそうに視線を泳がしていた…


「…キルト男爵よ。」


たっぷりの間の後、少年は重々しく男の名を呼んだ。


男爵は中々決意が決まらない罪人の様に、俯けた顔を上げようとしない…


「…今晩は、貴殿が主役となるような晩餐と致しましょう。」

少年は淡く微笑んだ。



 
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