BL
□呑み込んだ台詞
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「……貞治」
「なんだ?」
静かに紡がれる彼の言葉。
立ち止まり、ひたと俺の眼を見詰めて───…
呑み込んだ台詞
(…まだ、来ないだろうか。)
待ち合わせの20分前に着いた喫茶店。
和風でしっとりとした雰囲気のこの店は柳の行きつけの店である。
「やはり来ていたか」
「蓮二」
急に心臓の音が大きく響く。
柳は口許に笑みを浮かべながら乾の向かい側の椅子を引いた。
「久しぶりだな、蓮二。元気そうでなによりだ。
……で、なんだ?話というのは」
「まあ、そう焦らなくてもいいだろう。
此処の茶菓子は美味いぞ」
「そうか……では、」
『お前のお勧めを頼む』
「…と、お前は言う」
「……ふ、相変わらずだな」
変わらない親友に笑みがこぼれた。
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