BL
□呑み込んだ台詞
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「……貞治」
「なんだ?」
静かに紡がれる彼の言葉。
立ち止まり、ひたと俺の眼を見詰めて。
「…誕生日、おめでとう」
「…!」
覚えていてくれた。
その事実がどうしようもなく嬉しくて、頬がかっと熱くなるのを感じた。
(蓮二………蓮二……蓮二、蓮二!)
喉元までせりあがってきた、発音するにはどうしようもなく恥ずかしい台詞を呑み込んで、ありがとう、と一言呟いた。
「……そ、それでだな、貞治」
「ん?」
「プレゼント……気の利いたものが思い付かなかったんだが…、受け取ってくれないか?」
「貰ってもいいのか?」
「勿論だ」
プレゼント、と話す蓮二の手元にはそれらしきものは見られなかった。
(また何か企んでいるのだろうか。)
しかし、少しかたい表情の彼が何かを企んでいるようにも見えなかった。
「貞治」
振り向きざまに奪われた慣れ親しんだ眼鏡。
「…っあ」
近眼のぼやけた視界でも、一際はっきりと見えた彼の鋭く美しく優しい瞳。
彼の右腕が俺の首にするりと回る。
一際近付いた唇が奏でた言葉。
「ずっと俺の傍に居てくれ…貞治……」
その言葉を理解するまで一秒……、二秒。
優しく塞がれた唇に呼吸が止まる。
視覚も触覚も彼に奪われて、一際大きく響く自分の心臓の音。
呑み込んだ台詞。
───ずっとずっとお前が好きだ。
ずっとずっとお前が好きだった。
「───蓮二、俺……───」
「───…!
…さだはる……っ!」
震えて泣きそうな声の彼の表情がぼやけて見えないことが、堪らなく悔しかった。
Happy Birthday!
Sadaharu.I/0603
&Renji.Y/0604
fin..→