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□電波的な彼女
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雨の家に付いた時はもう、日が沈み星が夜空に輝いていた。
家の周りは静かで、何の音もしない。だんだんと夜になる空はジュウをも飲み込みそうな勢いで暗くなっていく。
街灯が点き、辺りを少し照す。
二三度深呼吸し、門の前にあるインターホンに手を駆ける。
雨に何て言われるのか不安になる。
突き放される言葉をかけられたらどうなるだろう。 もしかしたら法泉の言うことも嘘かも知れない。 そうだといいな。
インターホンを軽く押し、返事をまつ。
そして、玄関から誰かが出てきた。
その姿は雨ではなく、妹の光。
鋭くも何かを求める様な目でジュウを見詰めた後、口を開けた。
「なんの用?」
ジュウはすかさず答えた。
「話があるんだ」
「…あんた、またお姉ちゃんに!…」
「いや、お前らにだ」
「えっ?」
光は少し驚いた顔を見せたが、ジュウを家に入れた。
ジュウからすれば、こんな簡単に家に入れてくれるとは思っていなかったので少し戸惑った。
玄関で靴を脱ぐ。
「なぁ、光…」
「なに?お姉ちゃんなら今呼んでくるから」
「…何か、在ったか?」
「どういう意味よ?」
「誰かに……後をつけられている…とか」
「…何で知ってるの?……あんたまさか私の後を追って来たの!?」
「ち、違う。だが、誰かに後をつけられることがあったか聞いただけだ。在るんだな?」
「う、うん。何度か、学校の帰りに…何で?」
「お前…そいつら、倒そうとか考えていないだろうな?」
「え、何度か思ったけど、まだやってない」
「そうか…」
少し安心感を感じた。もし、光がそのつけている奴等に闘いを挑んだら、たぶん勝てない。
本当かも知れない。
裏十三家のことが。
「なぁ、光」
「何?まだ、何か用?」
「お前…雨や両親から何か聞いてないか?」
「…ううん。何も聞いてないよ、それにお父さんとお母さんは最近用事で家に帰って来てないの」
両親が不在?
まだ、確信出来ないので光に雨を呼んで来てもらう。
雨なら何か気付いているはずだ。
しかし、雨はこんな自分に家庭の事を教えてくれるだろうか?
主ではない、自分に…。



















電波的な彼女/雨の告白
第二章-心がついた偽-














二階から雨と光が降りて来た。雨はいつもどうり平然としていた。
とにかく普通に話しかけてみる。
「よう」
少しぎこちなかったか? そんなことを思いながら雨の反応を伺う。
雨はジュウの前まで歩き、一度軽く頭を下げてから返事を返した。
「こんばんは…柔沢くん…」「…ああ」
光はジュウと雨の返事のやり取りに驚いているようだった。
ジュウ様から柔沢くんに呼び方が変わったのだ、そりゃあ何かしら疑問を持つだろう。
しかし光は何も言わずただ見ていた。
「少し話があるんだが、いいか?」
「今日はもう遅いです。お帰り下さい」
雨がこう言う返事をしてくるのはだいたい予想はついていた。
だが、こんな所で引き返すつもりはない。
答えを明確にしなければ帰れない。
「いや、帰れない」
「お帰り下さい」
「帰れない」
「お帰り下さい…」
「帰れない!……」
「……お帰り下さい」
「雨!お前に何があったのかは知らない。けど、何で俺に相談しない!」
「何のことですか?」
ここからジュウは一気に確信につく事にした。
「お前らの家のことだ」
雨の表情は長い前髪で伺えない。
「私の家が…何か?」
何のことですか?と続ける雨に疑問を覚えた。
何かおかしい。
違和感がある。
「ちょっと来い」
ジュウは雨の腕を掴み外に連れ出した。
雨は少し抵抗したが関係無い。
真実を聞き出した後、謝ればいい。
そのまま歩きだし道を二人で並んで歩く。
無言のまま時間が過ぎ、雨の家から離れていく。 公園の入り口の前でジュウが立ち止まる。
隣の雨も立ち止まる。
家から無理やり連れ出したのにも関わらず雨は無言だった。先に口を開いたのはジュウだった。
「なあ、雨。ある奴から聞いたんだが…お前の家……狙われてるのか?」
無反応の雨。
ただ立っている人形のようだ。
「…本当なのか?」
「……何を言っているのか理解しかねますが」
「……お前が俺に飽きたのはもういい、何も言わない…けどお前の家が狙われてる可能性が在るんだ!お前や光が危ないかも知れないんだ!」
「だから……?」
雨の返事は余りにも冷たいものだった。
ジュウは言葉に詰まる。 「…だからっ。」
何て言ったら良いかが思いつかない。
頭が良ければ良い言葉が思いつくのだろうか?
「…用がなければ帰ります」 雨がジュウに背を向けて歩こうとした。
このままじゃ、昨日と同じだ。
ただ見てるだけじゃ駄目なんだ。
どうしたら良い?
雨に立ち止まってもらうにはどうしたらいい?
お前の本当の気持ちを伝えろ。
誰かが言った。
前向きな自分だ。
本当の気持ち?
そうだ…お前は雨にどうしてもらいたい?
お前は雨に何をたい?
考えろ。
俺は…。
「待ってくれ!雨!」
その言葉に雨は立ち止まるが振り返らない。
「俺は…俺達は……」

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