紅髪の天使T

□Ring.9
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初陣


 裏武闘殺陣は、A・B・C・Dの4つのブロックに別れ、トーナメント式に行われる。

 火影はAブロック
 麗(紅)はDブロック

 勝ち進めば決勝戦に紅麗のチームと対戦するようになっていた。


 火影の第一試合、その相手は実力派選手がそろった武闘家、チーム名[(くう)]。
 彼らは観客達から絶大な人気で支持されており、火影はブーイングの嵐に見舞われた。
 ■■が試合会場にたどり着いた時には、凄まじい非難の中、火影が見事勝利した瞬間だった。


『みんな!』

「■■!? 遅かったじゃん!」

「良かった! 心配してたんだよ!」


 待機場にいる風子と柳が大きく手を振り、■■も同じように手を振りながら階段を急いで降りた時だった。烈火達の顔を見たら気が緩んだのか、■■は階段を踏み外し、体が傾いた。
 とはいえ自力で着地できそうだったのに、誰よりも素早く動いた水鏡によって抱き止められる。


「大丈夫か? 気を付けてくれ」

『あ、ありがとう』


 観客席からの暴言は止み、それよりも赤髪の美女は誰なのかという方に注目が集まった。


「オイ誰だあの女! 火影の仲間か!?」

「なんなんだよ火影ってチームは! 空にも勝つし、イイ女揃えてやがる!」


 水鏡は周囲をじろりと睨み、■■の腰を抱いたまま待機場まで降りてゆく。


『み、水鏡くん。もう、ひとりで歩けるから』


 しかし結局は待機場までしっかりと抱かれ、到着と同時に解放された。
 苦笑しながら隣へ来た柳と風子に、■■は小声で耳打ちする。


『水鏡くんの過保護が増してる気がするんだけど』

「仕方ないよ。■■ちゃんの事、大勢の人が注目してるもん」

「こればっかりはね〜。■■がいない間、敵よりおっかない顔してたんだから」

『でも、私の生い立ちを話してからなんだか……』


 優しいけれど、苛立たしいようにも見え、何より笑顔が消えた。出会った頃も淡白だったけれど、時間を重ねて日々を一緒に過ごしていくうち、よく話しかけてくれるようになったし、優しく微笑む事も多かった。
 なのに……


「あ〜、そりゃ……」


 昔の恋人が発覚しちゃったからねぇ、とは言えず、風子は口を濁す。
 そして烈火が水鏡と入れ替わるようにしてやって来た。


「受付済ませてからすぐに試合が始まってよ〜。いや焦ったぜ! すぐに終わらせて迎えに行こうと思ってたんだ。大丈夫だったか?」

『うん、この大会では自由に過ごせる事になったよ。ただ、貢物に関しては……』


 取り下げてもらうどころか、自分も追加されたかもしれない。だが正式にそうなったのかは分からないので、なんと説明しようか迷っていると、烈火が声を張り上げた。


「不安にならなくていい! 火影が勝ちゃぁいいんだからよ!」


 大した問題ではないと、他のみんなも頷きを返した。


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