紅髪の天使T
□Ring.1
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移りゆく時代と出逢い
新しい生活は私により多くの知識を与えてくれた
知らない事ばかりに溢れていた
毎日が新鮮で、楽しくて
どんな事も頑張れる気がした
それが日常的であればあるほど幸せで
切なくて――
「おい、来たぜ!」
「あぁ……今日も綺麗だ」
「天使だ……」
春には桜が、秋には紅葉が咲く木々と、中央にある噴水に向かってレンガが敷き詰められたこの公園は、"彼女"のお気に入りの散歩コースであることは有名だった。
それだけ彼女――
"■■"は、美しかった。
日焼けを知らないような色白の肌。長いまつげと透明感のある瞳。整った顔や身体の造形はもちろん、特に目を惹いたのは深紅に輝く髪色だった。腰よりも長いそれは歩くたび艶やかになびいて、通りすがりの誰もが彼女の美しさに目を奪われるのだ。
「■■さん! 僕とデートしていただけませんか!」
■■を一目見ようと人が集まるのは珍しくないが、声をかけるほど勇気がある者は珍しかった。
他校の制服を着た男は自信たっぷりに■■へ詰め寄り、ギラギラと目を輝かせている。
『ええと……どちら様ですか?』
「それはデートしながらでもお話しましょう!」
『それは困ります。ごめんなさい』
「そう思うのは最初だけ! お互いもっと交流を深めるためのキッカケだと思って!」
『あ、ちょっと痛いです。離して下さ……』
男が手を引き連れ出そうとした瞬間、突風の如く現れた烈火が男に飛び蹴りをくらわせた。男は見事に生垣に突っ込み、ちょうどそこの茂みから見守っていた仲間達が慌てて出てくる。
「なんだテメェ!」
「おい待て! こいつ…… 花菱烈火だ!」
いかにも喧嘩慣れしているガラの悪い男達だったが、烈火を見た途端に顔色が悪くなる。
"花菱烈火"、彼もまた腕の立つ男として地元で有名であり、うかつに手を出す不良は一人もいなかった。
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