BLEACH

□淡雪の囁き
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“…冬獅郎…”


「!!?」


一瞬、彼の中で時間が止まった。

(え…?)

脚をピタリと止め、辺りを見回す。
しかし、声の主と思われる人物は誰も側にいない


「今…」

心臓が早鐘のように波打つ

「誰かが俺を呼んだような…」

(そう、誰かが…)

違う…っ

(あの声は―…)

「……」



無意識に彼の唇が動き、聞き取れるかどうか分からないほど小さな声で
“あなたの名前”を紡ぐ


「……」

日番谷の青白い瞳が凍てつくような光を浴びる


(いや…きっと気のせいだね、だって…アイツはもう―)





“何処にもいない”んだから…





「……」


彼は悲しげに眉間に皺を寄せると、静かに空を見上げる。

―ふわぁ…‥

白く染まった空に向かってかざされた彼の掌に雪が降りる。

シュ・・・ッ

そして彼の温もりに触れるとフッとその姿を消す

「冷たい」

掌に残る水滴を切なげにみつめながら、ぽつりと呟く

―ザ・・・

ザッ


ザッ・・・


止まっていた足を動かすと人気のない奥へ歩いていく

鑑賞用の柊が植えられた噴水まで来ると、広場の中心で止まる

「ここだな」

俯きながら落ち葉が敷き詰められた足元を見つめる


「お前と俺が初めて出会った場所…」

そして―――

「お前と俺が最後に言葉を交した場所…」



END
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