携帯獣

□旅の終わり
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畜生。何で、何で!
そんな、馬鹿みたいな自問自答を繰り返したって結果は何一つ変わらないし、意味なんてない。ただ、悔しいだけが占めていた。負けたって云う現実しか無くて、じいさんの言ってた事がぐるぐるした。ポケモンへの愛情。信頼。そんなの。俺だって・・・!

突如、近くの草むらががさがさと音を立てる。ポケモンかと思い警戒したが、そうではなかった。幼なじみの、妹だった。真っ黒でボサボサの頭に葉っぱがくっついている。頬に泥が付いている。


「何しに来たんだよ」
「グリーン兄ちゃん探してた」
「嘲笑いに来たのかよ」
「・・・」
「じゃぁ何だよ。慰めか?同情か?そんなのいらねぇんだよ!!」


首を振って、近付いて来たそいつを見たくなくて背を向ける。さっさとどっか行けよ。


「まだ居たのか」


躊躇いながら隣に座る。睨み付けてやれば、ビクッと肩を竦ませた。それでも動かなかった。赤い、目。

―あいつと同じ顔。目。髪―


「触んな」


伸びてきた手を振り払う。年下相手に大人気ないのは分かってる。それでも、止められなかった。


「レッドの所に行けよ。祝ってやんなくていいのかよ。お前の兄ちゃんは俺じゃなくてレッドだろうが!」


八つ当たり、だ。みっともない。ダセェ。


「・・・兄ちゃんは、兄ちゃんだけど。グリーン兄ちゃんだって、兄ちゃんだもん」
「・・・」
「私にはグリーン兄ちゃんがどれだけいやなのか分かんないけど、グリーン兄ちゃんがつらいのやだから。怒られるのもやだけど、グリーン兄ちゃんが一人なのはもっとやだ」


意味分かんねぇし。


「おかえり、グリーン兄ちゃん」


これじゃぁどっちが年上か分からないな。

腕を引っ張って引き寄せる。小せぇな、当たり前なんだけど。ぎゅうっと腕に力を込める。なんか潰れるみたいな呻き声がした気がした。この際大目に見ろよ。


「ごめんな」
「・・・おつかれさま」
「おう」


ガキなのは俺の方。悔し泣きは、もうしねぇよ。






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