携帯獣

□個人的には命懸け
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「休みが欲しいんですけど」
「めずらし。何?デート」
「・・・そうですね」
「本当なの!?」
「相棒と相方・・・三人でデートできたらどれだけ幸せだったか・・・!!」
「あ、違うんだ。つまらないの」


そんな会話をしたのが数日前。結構簡単に許可が降りた。今そんなに忙しくないからいいよー、みたいな。ラッキーなのかアンラッキーなのか。教えてハピナス!とか、まぁ。何でこんな面倒な事になったんだ。私のせいだけどさ。普段のフィールドワークと変らない格好で、二匹のボールを持つ。相棒出して手もいいかなー。てゆうか、相方も出してちゃだめかなー。日除けのために帽子を被る。キャスケット帽だけど、思いっきり深く被った。よっし!これで問題ない!


「二匹とも」
「ブーィ」
「イゥ」
「出陣だー!」
「イーッ!!」
「イーゥッ!」


気合を入れていくぞ。


「おはよう」
「おはようございます」


うわ、爽やか。普段も普段でそうなんだけど、一応オフだからかちょっと違う。まぁあれだよね。イケメンは何してもイケメンなんだけどね!!ちょっと自棄になってきた。


「それじゃぁ行こうか」
「・・・はーい」


何処に行くつもりなのかは知らないけど、何処かに行くらしい。取り合えず付いていけばいいよね、そうだよね。始まったばっかりだけどさ。もう帰って良いですか?ダメだよね知ってる。


「ねぇ」


けどオーキドさんは何がしたいんだ。これ仕返し?けどこんなの仕返しにしては手が込みすぎと云うか。


「ねぇってば」


わざわざ自分の時間を割く必要性が見当たらない。頭良いけど馬鹿なの?そうなの?


「うわっ!」
「聞いてなかったでしょ」
「聞いてませんでした。え、何?」
「朝食は食べた?って訊いたんだけど」
「あ、あぁ・・・朝ご飯ね。食べ・・・た?」


食べたっけ?二匹にご飯をあげて、それを眺めつつトマトを齧った記憶はあるんだけどちゃんと食べてない気がする。


「トマト食べた」
「食べてないんだね。じゃぁ先に何か食べようか」


そんな感じで朝食を食べる事に。一個言っていい?個人的に、物凄く。前途多難!



・・・



適当なレストランに入ってモーニングを食べる。彼女が出掛けるのを嫌がっているのは分かっていた。分かってたんだけど、無理矢理取り付けさせた。そうでないと彼女は僕と話なんかしようとしないし。別にそれが深刻な問題を招くわけじゃない。最低限の話はするし、今までそれでやってこれたんだから。これた、訳じゃない。関わらなかっただけ。


「・・・」
「何処か行きたいところとかある?」
「別に、ないんですけど・・・」
「けど?」
「ちょっと訊いてもいい?」
「何かな」
「これ、楽しい?」
「どういう意味?」
「いや、本気で。そりゃね。この前のは悪かったなとは思いますよ。けどさそれで私と出掛けてどうするの?どっか出掛けたかったんならさ、他に居たと思うんですよ。オーキドさんなら選り取りみどりでしょう」
「選り取りみどりって・・・」


これは確実に貶されてるよね。はぁ、と溜め息を零してから彼女を見る。一瞬だけ視線が絡んだけれど、直ぐに彼女が俯いたせいで逸れた。ゆっくり話がしたかっただけだし、朝からになるとは思わなかったんだけど。それならさっさと話を済ませてしまおうか。


「じゃぁこっちから訊くけど、」
「はい?」
「僕の何が気に入らないの」
「気に入らないなんて、」
「気に入らないんだろう」





咄嗟に頭を上げて後悔した。見た事が無いくらい冷たくて、見下すような眼だった。




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