携帯獣

□罵倒して傷つくのは
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元々そう云うものだったといえばソレまでである。必要以上の言語というものを失くしたわけでもないだろうが、彼にとって他人との交流が不必要なものに成り下がったのは間違いはなかった。

この人は、他人と関わらなくても生きていける人だ。ポケモンさえ居れば生きていけるような人だ。それが気に入らないと思うのは、我儘なのだろうか。

そのすかした顔に一発ぶち込んでやりたくなるくらいの苛立ちと、縋りついてぐずって子どもみたいに泣き喚いていやりたくなる寂しさと、声が枯れて痛くなって出なくなるくらい罵倒してやりたい憤り。そんなものを向けたところで痛くも痒くもないというのでしょう?なんとまぁ、私はピエロか。稚拙な言葉しか搾り出す事しか出来ない私が、コミュニケーションと言う物を捨てた人間にそれを与えなおすなど無茶な事ではあるのだろうけれど。


「レッド」


ほら、何も考えていない。グリーンを連れてこなければ。レッドとまともな会話が出来るのはグリーンと、彼の母親ぐらいであろう。けれど、こんな所に母親を連れてくるわけにも行かない。だから出向いたというのに。


「此処はそんなに居心地がいい。よかったね」
「・・・よ」


ゆっくりと唇が動く。今まで出すのを忘れていたからか、その声は掠れて聴き取りにくかった。

何ていったのか分からなかった。だから、もう一度。唇が動く。


「もう、いいよ」

「来なくていい」


寧ろ、来るな。そう籠められている気がしてならなかった。どうやら私は迷惑以上の何者でも無いらしい。御節介ではなく、不愉快。


「バイバイ」


真っ白な世界に佇む真っ赤にさよならを告げた。



どうして涙は頬を伝っているの。






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