携帯獣
□半月に哂う
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「ロケット、団・・・?」
「気付きませんでしたか?」
笑う哂う。見下したように。その指の引き金を引いて、嘲笑って。
「私としても手荒な真似はしたくありません。大人しくしていてもらえますか」
恐怖を煽って、それを面白がって。カツリと鳴ったのは近づく足音か。それとも震える歯か。逃げ場が見つからない。見つけることが出来ない。筋肉が強張って引き攣って。
「いいですね、その表情。とても美しく見えますよ」
変わらず。見え隠れする狂気が絶望的。蹴落として傷つけて弄んで。この状況がたまらなく愉快だと表情が物語っていた。
動けと脳は身体に信号を送り続けている。けれど身体は矢張りピクリともその命令には従わず、ガタガタ震えるだけだった。
「そのままでいてくださいね」
あまりにも綺麗な微笑が印象的。漆黒の服に浮かぶ“R”の文字。
「ぅ、ぁ・・・」
ひやり。冷たく。熱を奪うように。嫌だ嫌だと何かが訴えてくる。
「どうしますか」
尤も。貴方に選択肢はないのですけれど。一応訊いてあげますよ。
温もりを失った声色で、なのに途轍もなく柔らかく。幻想か現実か。分からなくなる。それが今までのことなのか。それともこれからのことなのか。
考えると言う事をやめた頭では何も分からない。ただ、眼前に広がる薄緑色が艶やかで。
意識を保つのも困難だった。
(遭った瞬間から、捕らわれていた)
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