携帯獣
□復讐劇
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「何を見る?」
真っ直ぐ此方を見ながら、彼女は言った。それがおれは意味が分からなくて、でも聞き返せなかった。何でだろうな。わかんないけど。多分、それを答えたら終わりだと思ったんだ。
「楽しかった?」
問い掛ける事しかしないから。だからおれはそれに答えるか、黙るかの二択しかない。
でもそれで。それでどうなるんだ。
「返して」
「・・・無理だよ」
彼女の表情が険しくなる。だって、無理だろ。おれにはそんな事できない。そして。あの時別の道を選ぶ事もできなかった。
「サカキ様をかえして」
サカキ。悪の組織、ロケット団の首領。ロケット団は解散した。解散させた。あれが間違いだったというか。自分が正しかったと思うから。
「正義が悪を憎むように、悪が正義を憎むのは当然の流れだ」
彼女は吐き捨てる。ぴったりとおれの眉間の高さにあわせて、腕を挙げ、人差しゆびで指す。
憎しみで溢れている。そんな表情で。憎悪だけが動かしているようで。
「レッド、グリーン、ブルー。忘れない。いつか、必ず」
宣戦布告だった。
「おれは、自分が正しいと思ってる。だから、その時は」
同じように返して。
(さあ、幕は上がった!興じようか)