携帯獣

□いつも突然
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サトシが、おれ、イッシュ地方に旅行に行くんだ!と自慢してきた。それを羨ましいと言えば、サトシはいいだろう!と返してきた。イッシュ地方はこの辺りでは全く見られないポケモン達が沢山生息していると聞く。羨ましがるのも仕方が無かった。何でもオーキド博士の学会があって、それに着いていくのが正しいらしい。サトシのママさんも一緒に行くんだそうだ。

益々羨ましい。


「そういやシゲルは行かないの?」
「シゲルは何か研究の方が忙しくて来れないんだってさ」
「へー」


まぁサトシとシゲルが一緒に旅行にいったって喧嘩してしまう可能性が高いし、そっちの方がいいのかもしれない。


「お土産よろしく」
「おう!期待しとけよ!」
「してるしてる」


出来れば可愛らしいイッシュ地方のポケモンでも捕まえてきて欲しい。でも、サトシってポケモンゲット苦手なんだよなぁ。結構捕まえると云うより、付いてきてもらうとか、向こうが捕まってもいいみたいな気持ちになるとか。ある意味それは凄いのだけれど。


「土産話もたっくさんしてやるからな!」
「じゃぁ全力で楽しんできて」
「うん」


当日の見送りもして、暇になったからケンジと一緒にポケモン達の様子を見ていた。サトシのフシギダネが指揮してくれるから、色々と観察は楽だったりする。シゲルのウィンディにブラッシングしつつ、日向ぼっこ。


「今オーキド博士から連絡があったんだ」
「なにー?」
「ピカチュウに雷が落ちたんだって!」
「!?」
「でも何ともなかったみたいで、無事らしい」
「そっか、良かった。あー焦った」
「それでさ、」
「未だ何かあるの?」
「サトシがイッシュ地方を旅するって言い出したらしくって」
「・・・」


もふっとウィンディの毛に背中を預ける。どうした?とでも云うようにウィンディは顔を覗き込んでくれて、更にぺろりと頬を舐めてくれた。主人と一緒で機微に敏いらしい。


「まぁた置いてかれた」
「平気?」
「サトシらしい」


サトシは何も言わずに旅に出てしまった。これでは何時帰ってくるか全く分からない。でも、それがサトシだし、仕方が無い。一体何度待たせれば気が済むのか。いい方向に考えるならば、サトシがイッシュ地方でポケモンを捕まえまくればポケモンはこのオーキド研究所に転送されるはずだ。珍しいイッシュ地方のポケモンを見られると喜んでおこう。


「なんてゆーかさーケンジー」
「ん?」
「お土産も土産話も大分先になりそうだね」
「ハハ。確かにね」
「シゲルに愚痴ってやろうか」
「今研究で忙しいって言ってただろ」
「そうでした」


まぁ分かってたけれど。
空は快晴、絶好の旅日和。


見送り、出来なかったんですけど。





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