携帯獣

□この距離感
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いつも何処に行っても懲りずに綺麗な年上のお姉さんに声をかけるタケシ。結構本気でいい加減にしろと思っているけれど、中々それは治らない。人の癖って云うのは治る物ではない。癖っていうか、何というか。どうせ成功しないのだから止めればいいのに。そりゃ確かにタケシが声を掛けるお姉さん達に私は敵わないけれど、たまにはこっちを見てくれてもいいと思う。言ったところで無駄なんだろうけど。


「何がいいのよ」
「カスミが思うよりタケシのスペックは高いよ」
「スペックって」
「料理も出来るし、優しいし。確かにシゲル程容姿端麗とは言わないけれど人とてならずっとずっと上だと思う。あんな車で女の人連れ回してるような奴よりは。いや、シゲルが嫌いな訳じゃないんだよ?」
「知ってる。・・・まぁタケシの料理がおいしいのは認めるけどね」


家事全般が出来てジムリーダーを務めている。今は旅をしているから過去形になるのかな?どちらにしろタケシ程の人なんてそう見つからないと思う。カスミには告白すればいいのに、なんて言われた事があるけれどそんな事出来っこない。今は一緒に旅をしていたい。

でもそうすることでタケシがお姉さんに話し掛けるのを毎回見なくちゃいけない。それは
胸が痛くて堪らない事でもあった。結局は現状維持するしか私には出来ない。


「やんなっちゃう」


はぁーっと溜め息を吐いてから前を歩くサトシとタケシの背中を見る。遠い。こんなに距離は近いのにとても遠くに感じる。咽喉に引っ掛かる物をもう一度飲み下した。










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