携帯獣

□シロガネ山にて
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お喋りに華を咲かせていた時、ラッキーがジョーイさんを呼びに来た。ジョーイさんは立ち上がり、一度此方を振り返ってにっこり。おぉ?


「さっき言ってたトレーナーさんが来たみたい」
「マジっすか!見に行きます」


ジョーイさんと同じように立ち上がって着いていく。先程ジョーイさんが言っていたピカチュウを連れたトレーナー。予想はしているのだが、あまりしっくり来ない。イメージその1。こんなシロガネ山にしょっちゅうくるのだから、おそらく筋骨隆々のガタイの良い人なんだろ。だがピカチュウ。悪い訳では無いが絵面的にはシャールだ。だから没。イメージその2。ワタルさんタイプ。つまりそこまでムキムキマッチョな訳ではなく、しかし貫禄があると云うか。大人の男性。そう、これだ。ワタルさんがピカチュウを連れていると考えれば少し違和感はあるが、イメージその1よりずっとマシ。けど。なんか違うような気がする。ま、百聞は一見にしかず。見てやろうじゃないかトレーナー!

意気込んでそのトレーナーを見たとき、私の予想は砕け散った。筋骨隆々なんてもっての他、大人と云うより未だ子供。見た目の感じ的に十代前半〜半ばくらい。青年とも少年とも言い難い頃。だけどその風体はしっくり来た。帽子を目深にかぶっているから、顔はよく分からないが綺麗な黒髪なのは分かった。ストンと受け入れたのだ。肩に乗ったピカチュウ超可愛い。不意にトレーナーが此方を向く。ガン見し過ぎたのかもしれない。そしてようやく見えたトレーナーの顔。髪と同じく綺麗な顔立ちだった。ちょっと女顔な気がする。トレーナーは無言であったが、代わりにピカチュウが鳴いた。


「はい。みんな元気になりましたよ」


ジョーイさんがトレーナーにボールを渡す。トレーナーは無言で頭を下げて、ボールを手に取った。ってか今、私とトレーナーは目が合った。トレーナー同士目が合ったらやる事って一つじゃない?


「ねぇ。トレーナー、何だよね。バトルしようよ」


ボールから視線をまた此方に向けたトレーナー。一瞬その瞳にギラリと光が宿った気がした。関係無いね。避暑に来ただけだけど、折角なんだ。相手してもらいましょう。



・・・



結果は、敗北。トレーナーは滅法強かった。そらもうむちゃくちゃ。これでも頑張ったのだが、実力差があった。6体目まで引き摺り出しはしたが、そこまで。手持ちはみんな先頭不能。まさかこんなに強いなんて。バトル中に聞いた声は凜としていて、絶対的な力を持っていた。背筋がゾッとするような。

二人してポケモンセンターに逆戻り。何も言わずに出て行こうとするトレーナーを引き止めれば、ちゃんと止まってくれた。


「名前は?」
「・・・レッド」
「レッドか。バトルのリベンジしたいんだけど、番号交換してくれない?」


するとレッドは首を振った。ポケギアを持っていないらしい。こんな便利な物を持たないなんて。でも確かに必要無さそうなタイプだ。


「じゃぁ何処に行けば会える?」
「此処」
「ポケモンセンター?でもいつ来るか分かんないじゃん。不定期なんでしょ」
「登っておいでよ」
「のぼ・・・は?」
「シロガネ山の頂上まで。いつもそこに居るから」


呆気に取られた私は呆然と立ち尽くした。レッドはポケモンセンターの扉を潜り抜けて外へ。え?シロガネ山の頂上?いつも居る?まさか、シロガネ山に住んでるとでも云うのか奴は!


「ジョーイさぁん!!」
「次頑張ってね」


ジョーイさんの笑顔が、真実だと語っていた。まさか過ぎる。頂上なんて未知の領域だ。けど、よし。気合い入れる。待ってろよレッド!絶対リベンジ果たすからな!









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