携帯獣

□避暑地
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だらける。これは仕方がない。避暑に行こうかと考えて浮かぶ場所は一つ。しかしそこは命懸けの場所。その場所とはジョウトとカントーの間に聳えるシロガネ山だ。標高何千メートル(だったはず)のシロガネ山は頂上は常に雪が降り注いでいる。避暑にはもってこいだが、あそこは野生ポケモンの聖地と言っても過言では無い程野生ポケモンに溢れている。しかも一匹一匹のレベルがかなり高い。その為、シロガネ山に入るには条件がある。中途半端な実力では近付く事すら許されない。まさに聖域。


(ま、関係無いけど)


すくっ、と立ち上がると早速準備。取り敢えずシロガネ山の麓にあるポケモンセンターまで行く事にする。頂上まで行くと寒過ぎる上に帰りが面倒くさい。細かいことは向こうに着いてから決めようと同じようにダレている手持ち達のボールを掴んだ。さぁシロガネ山までひとっ飛びだ。



・・・



到着したシロガネ山麓のポケモンセンター。相変わらずピリッとした空気を纏った場所だ。麓でも十分温度が低く感じる。これは十分避暑になるぞ。喜んでポケモンセンターに入ると、そこにはジョーイさん。笑顔が眩しい。ビューティー!


「こんにちは」
「こんにちはー。避暑に来ましたー」
「こんな所に」


ジョーイさんはクスクス笑う。それでも素敵!ジョーイさんは優しくてお茶とお菓子まで出してくれた。こんな所のポケモンセンターなんて暇なんじゃないかなぁ、と訊いてみれば矢張り訪れるトレーナーは滅多にいないらしい。だよなぁ、と納得しながらクッキーを齧る。うまっ。


「その代わり事務仕事が多いかしら。他のポケモンセンターの情報やリーグの事のね」
「じゃぁコンピューターがハッキングされたり、此処襲ったら重要なデータとか盗み放題って事ですか?」
「そうなるかしら。でもハッキングはそう簡単に出来ないし、それにこのポケモンセンターを襲いにくるのも大変よ」
「あ、確かに」


何度も言うがこの場所は入る人間を選ぶ。中途半端な実力では野生ポケモンの餌食だろう。成る程。絶好の隠し場所なわけか。警備を付けなくても、天然の警備が居る。寧ろ下手に人間の警備を入れるより安全だ。しかも、だ。このジョーイさん。見た目によらずポケモンバトルでもかなりの実力者らしい。そりゃこんな場所に居るのだから当然か。私はシロガネ山に入る実力はあるけど、実は頂上までは行った事が無い。だって面倒くさい。だから中腹まで行って帰って来るのが常だし、そう何度も来ていない。これで3回目くらいかな?


「じゃぁ寂しいですよねジョーイさん」
「それはね。でも偶に買い物に行ったりもするのよ」
「へー」
「それにね。不定期だけど必ずやってくるトレーナーさんも居るから」
「トレーナー?」
「そう」


ジョーイさんの口振りからして割りとそのトレーナーは常連らしい。こんな所にしょっちゅうくるトレーナー・・・一体どんな奴なんだろう。ジョーイさんの話ではとても無口な奴らしい。そんでピカチュウを連れている。ピカチュウか。いいなぁ。可愛らしい姿から結構人気のピカチュウ。けれどピカチュウは中々捕まえにくい。私もトライした事はあるが根負けして諦めた。そのトレーナーの連れているピカチュウは人懐っこくとても可愛いし、頭が良いのだそうだ。会ってみたいな、そのピカチュウ。


「時期的にそろそろ来るはずなんだけどね」


ジョーイさんが言った。普通に会いたい。さて、そのピカチュウを連れたトレーナーってどんな奴なんだろう。興味は募る一方だ。気になるなぁ、そう思いながらゴクリと紅茶を飲み干した。







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