携帯獣

□空色心模様
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晴れ渡る空、とお世辞には言えない天気で私は憂鬱だった。快晴、まで言わないからせめて太陽が顔を見せてくれていれば気分が違う。なのに雲はすっかり太陽を覆っていたちくしょう。そんな文句を言ったところで天気は変わらない。相棒が溜め息みたいな鳴き方をした。あ、今馬鹿にしたでしょ!


「未だやってるのかい?」
「・・・未だ終わって無いんです」


そんで、毎回思うんだけど、なぁんで生態調査をこの人と一緒にやらなければならないのか。グループ分けだってさ、もうちょっと違う組み合わせにしてもいいと思う。二回に一回は絶対組まされる。年が近い方がいいでしょ、なんて。良いわけあるか!けど研究所でしたっぱの私がそんな事言える訳が無い。あぁ、無情。


「そっちはどうなんですか」
「だいたい終わったよ」
「早いですね」
「君がポケモンと遊んでる間に進めていたからね」


うわっ、嫌味。確かに私は遊んでたけど。爽やかな笑顔のようで言ってる事は毒だ、毒。毒針みたいにぐっさり来た。毒針食らったこと無いから分からないけど。しかし、早くしないと一雨来そうなので早く終わらせようと言っていたのは事実。オーキドさんに終わったら先に帰って良いですよ、と言ったんだけど拒否された。前は頷いたのに。今日は気分じゃないとかそんな感じなんですか。


「相棒!」
「待ちなよ!!」


突然走り出した相棒を追い掛ける。普段クールなくせにいきなりの行動を取るのは、私に似たのかな。



・・・



外は大荒れ。全身びちゃびちゃ。目の前にはゆらゆら揺れる火と不機嫌なオーキドさん。悪いのが私だと分かって居るけれどそんなに睨まないで欲しい。だって相棒が!いやでも相棒は悪くない。こんなにかわいいんだから。


「後先考えないで行動するにも程があるよ」
「・・・すみません」
「少し自由にしすぎなんじゃないの」
「反省してます」
「口だけならいくらでも言えるからね。行動が伴わないと意味無いんだよ」


グサグサグサグサ。カマイタチか、ってくらい。いや、どっちかって言うと連続切りか。溜めの時間が無いから。それくらい滑らかに言葉をはき捨ててくる。気分が落ち込むのと同時に感心もしてしまった。言い回しとか語彙とか的確に傷口を抉って、塩を塗りこんでくる。なんて人だ。性格悪い。私がそんなの言える立場じゃ無いんだけど。

会話も無く、擦り寄ってくる相棒に視線を落として撫でる。雨が打つ音に混じって雷も聞こえ始めた。やだな、雷。そんな事を思って居ると一瞬だけ、この洞窟内が明るくなる。雷が落ちたんだ。相棒を抱き締めて俯いた。本当に駄目だ、私。私のせいでこんな目にあわせちゃってさ、毎回こんな失態するからしたっぱなんだ。


「・・・ごめんなさい」


小さくて聞こえなかったかもしれない。多分そうだろう。無反応だし。皆心配してるかな・・・私を、じゃなくてオーキドさんをね。私はこんなのしょっちゅうだから。






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